ロシアのウクライナ侵攻について、「主権国家への軍事侵攻は絶対に容認できないが、ウクライナの国益をハンガリーの国益より重視する政策は道徳的にも間違っている」と強調し、「2022年の大きな成果は、わが国が可能な限り、ウクライナ戦争の影響に飲み込まれないようにしたことだ」と言い切る。
ハンガリーはウクライナから殺到する戦争避難民を受け入れる一方、軍事支援、武器供給に対しては拒否してきた。オルバン首相によると、ウクライナへ武器供給した場合、同国最西端ザカルパッチャ州に住むハンガリー系少数民族に危険が及ぶからだ。EUの対ロシア制裁には「制裁はロシアよりEU加盟国の国民経済を一層損なっている」として反対の立場を取ってきた。オルバン首相の政策について、ゼレンスキー大統領は「EUの結束を崩すロシアの共犯者」と批判している。
ハンガリーはロシアとの経済関係、特にロシア産天然ガスの確保ではこれまで通りの量がロシアから輸入されている。EU加盟国の中でウクライナ戦争後もロシア産天然ガスが止まらず、供給されている国はハンガリーだけだろう。
興味深い発言は、オルバン首相は「ウクライナ戦争は、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)との戦いでは勝利のチャンスがないことを明らかにした」と、ロシア軍の力を冷静に判断していることだ。そして「ロシアはハンガリーの安全保障にとって真の脅威を与えていない」と主張している。
ウクライナ戦争は現時点では、停戦の可能性が少ない。戦争の長期化を覚悟しなければならないだろう。ロシアの場合、国内で反プーチン勢力の動き、ウクライナでは国民の戦争疲れ、ウクライナを全面的に支援してきた欧米諸国では、支援疲れと共に、オルバン首相のような実利を最優先する政治家の台頭による結束の緩み、等々が予想される。「2023年は危険な年」となることは避けられない雲行きだ。
なお、ハンガリー国営通信MTIによると、ミュンヘンのMSCに参加した中国の外交トップ、前外相の王毅・共産党政治局員は20日、ブタペストを訪問し、シーヤールトー外相らと会談する予定だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。