
エルドアン大統領トルコ大統領府公式サイトから
アナトリア南部を震源とする地震が発生し、トルコならびにシリア領内で甚大な被害を出している。本稿執筆時点で両国の死者は4万人を超え、どこまで増えるのか想像もつかない。国境で分断されているもののクルド人が多く居住する地域を中心に被害が発生しており、”クルディスタン大震災”と呼ぶべき災害だ。
時間が経つにつれ明らかになってきたのが、未曽有の被害の原因が人災であったという点である。多くの人々が亡くなる原因となった建物の倒壊については、杜撰な建築と”日本並み”耐震基準逃れを当局が推奨していた実態が報じられている。
建設業者の逮捕が相次ぐ中、イスタンブールの国際空港で多額の現金を持ち国外逃亡をしようとしていた業者の男が、出国直前に逮捕される一幕もあった。奇しくも地震の前日、一部のメディアは住宅・病院建設事業における不正入札疑惑を報じていた。それによれば、建設業者が公共事業に影響力を持つエルドアンの関係者に、多額の賄賂を支払っていたというのである。
問題の場所は、今回の震源地から離れたアナトリア南東部マルディンであり、倒壊とは直接関係ない。しかし、今回の倒壊多発の裏にある建築行政の闇がいかに深いかを示している。
今回、トルコ国内だけで3万人以上の死者が出た原因は、紛れもなく政府の対応の遅れにある。
一方で対応が早かったこともある。翌日の7日には、トルコ軍が震災被害を受けたシリアの町タル・リファアトを砲撃したとクルド系メディアが報じた。シリアの”親トルコ派”テュルクメン団体のトップもこの攻撃について言及していたため、理由はどうあれ攻撃そのものはあったとみられる。さらに、コバニでの無人機攻撃など被災地への攻撃は続いている。トルコ政府が生存者救出よりも優先していることが何か、よくわかるであろう。