最後に、「バフムトのカラスたち」のついでに「ウィーンのカラスたち」の最新情報を報告しておく。

オーストリアの国民議会議事堂が先月12日、改築後再オープンされた。新議会の特徴は屋根のドームがガラス張りということだ。直径は28メートルで、面積は約550平方メートルだ。天井がガラス張りだから議会内は明るい。国民議会の公式サイトにはガラス張りのドームについて、「わが国の政治の透明性を象徴するものだ」とその意義が説明されている。

ところが、オープンしたばかりの議会のドームのガラスにひびが入っていることが判明したのだ。巨額な資金を投入して建設されたオーストリア政治のシンボル、議事堂のドームのガラスを壊したのは誰か。議会関係者は犯人捜しを始めたが、幸い、犯人は直ぐに見つかった。議会建物周辺を棲家とする「ウィーンのカラスたち」が石を落としてガラスを壊したというのだ。

ウィーンのメトロ新聞「ホイテ」は早速、「民主主義の殿堂、国民議会のドームのガラスが壊された」と大げさに騒ぎ、犯人のカラスたちを「民主主義の敵」と報じた。一方、口の悪いウィーン子は、「カラスは国会議員たちの腐敗に抗議しただけだ」と、カラスたちを庇う。ドームのガラスにひびをつけた「ウィーンのカラスたち」はこれまでもよく知られてきた。議会に駐車していた議員の高級車が石などで傷つけられたことが過去、何度かあったが、犯人はカラスたちだったからだ。

ウクライナの戦場「バフムトのカラスたち」と音楽の都「ウィーンのカラスたち」ではその生活環境は大きく違う。どちらがカラスにとって幸せかは明らかだろう。ワルツの曲に乗って石ころ遊びしている「ウィーンのカラスたち」を「バフムトのカラスたち」はやはり羨ましいだろう。

ウクライナでの戦闘は激しさを増すばかり ゼレンスキー大統領Fbより

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。