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日本学術会議は内閣府が所管する行政機関であり、政府を構成する機関に他ならない。何かと強調される日本学術会議の「独立」も日本学術会議法で規定された目的を達成するための「手段の独立」に過ぎない。
日本学術会議がまるで組織体として裁判所や国会、地方自治体のように政府から独立しているように論ずるのは誤りである。
また、内閣総理大臣による会員の任命拒否が批判されているが国民主権を採る日本国憲法において主権者たる国民の意思が反映されない仕組みを持つ行政機関は憲法違反である。
「日本学術会議の推薦に基づく任命」を当然視する者は日本国憲法を語る資格、とりわけ「護憲」を語る資格はないといえよう。任命拒否に対し「学問の自由」への侵害が強調されるが、学問の自由とは国民の基本的人権である。政府を構成する行政機関たる日本学術会議の業務とは無関係である。
学問の自由への侵害を根拠に任命拒否を批判する者は今一度日本国憲法を読み直すべきだ。学問の自由は日本国憲法のどの章に規定されているか。「第3章 国民の権利及び義務」ではないか。日本学術会議が望む人事が果たされないことを学問の自由への侵害と評価するなどあり得ない。
それどころが学問の自由については日本学術会議こそが侵害しているという疑惑が出ている。具体的には日本学術会議による2017年の「軍事研究の禁止」の声明が陰に陽に各大学に圧力を加えているという疑惑である。
日本社会では公的組織による声明は形式では終わらず場合によっては「命令」と同じ効力を発揮する。だから「日本学術会議による学問の自由への侵害」は十分にあり得る話であり、これはコロナ禍を経験した今なら皮膚感覚でわかるのではないか。
日本学術会議が政府を構成する機関であることを考えれば、同会議による学問の自由への侵害は「政府による人権侵害」に他ならない。
マスコミ好みの表現で言えば「権力による人権侵害」である。これはもっと深刻に議論されなくてはならない。内閣総理大臣による任命拒否よりはるかに重要な問題であり、国会が責任をもって調査すべきだ。このような事態を調査すべく国会には憲法上、国政調査権が認められているのである。
驚くのは普段、隙あらば「権力監視」を標榜するジャーナリズムが日本学術会議という権力の側に立ち人権侵害疑惑に触れない事実である。異様という他ない。