ジェンダーの問題では、生物学的な「男」と「女」の2性間の問題を扱うだけではなく、セクシュアル・アイデンティティ(性的指向)とジェンダー・アイデンティティ(性自認)が含まれてきた。具体的には、ゲイやレスビアン、バイセクシュアルなどの性的少数派を意味する一方、トランスジェンダー、シスジェンダー、ジェンダーフレキシブルといった性自認が含まれている。

いま国会で議論されている性的少数派(LGBT)差別是正法案などは、性的指向を主に扱っている問題だ。その性的指向は今日、LGBTだけではなく、50以上、多いところでは70以上のジェンダー定義があるのだ。LGBT関連法案を作成するならば、70余りの性的少数派の性的指向について明確な定義が先ず必要となるだろう。

自分は「男」でも「女」でもないという「ノンバイナリー」の人がいる。メディアは「第3の性」と報じて話題を呼んだ。ウィーンの行政裁判所は、性別エントリーの登録の際、「男」と「女」の2性だけのエントリーは間違っているとして、「男」でも「女」でもない「第3の性」、ノンバイナリーの登録を容認している。それに先立ち、同国の憲法裁判所は2018年、「性別が男性か女性かが明確でない人々は、中央の市民登録簿と書類に登録される権利を有する」との判決を下した。

ノンバイナリーは厳密にいえば、「第3の性」ではなく、性的指向のカテゴリーに入るものだ。すなわち、ノンバイナリーも「2性」の世界の一つの性的指向、性自認として扱うべきだろう。

参考までに、実業家として活躍され、世界の経済界に通じられている松本徹三氏がSF小説「2022年地軸大変動」を発表されたが、その中に登場する異星人は「3性生殖の生物」というイメージで描かれている(カトリック教義のトリ二ティ=三位一体を想起させる)。ただ、「3性」の存在がどのように生殖するかは小説の中では何も言及されていない。いずれにしても、「3性」の世界は男と女の「2性」からなる世界とは全く違った世界ということになる。その意味で異星人と呼ぶ以外にないわけだ。ただ、もちろん、同性婚を支持する人々を「異星人」と呼ぶつもりはないことを断っておく。 。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。