陸で小休止
出航して4日目、茶褐色のアマゾン川と落ち葉から染み出したタンニンなどによって黒色となったアマゾン川の支流ネグロ川が合流する。
流れがぶつかるところは水の密度が違うのかすぐには混じらす、ミルクを落としたコーヒーのように二色が渦巻き、そしてふたたびアマゾン川本流の茶色の流れとなりその流れの先にある人口200万人を超す大都市マナウスに到着。

船移動はここで一休みし、中心部付近の安宿に投宿してベッドに横たわる。
ハンモックも快適だが、寝返りがうてるベッドはやはり気持ちがい。
しかし、このホテルは蚊が多くエアコンの稼働時間も制限されているので、別のホテルに移動しそこを拠点にアマゾン観光にでかける。
町の市場では1mを超すナマズやアロワナやピラルクーなど、ペットショップや水族館で見られる観賞用の魚など日本の魚屋さんにはまず並ぶ事の無い魚が売られている。

その中でマナウス名物のTAMBAQUI(タンバキ)を市場の食堂で注文。
タンバキは草食性なのだが硬い木の実を割って食べるため、人間の奥歯のような歯が生えていて少し不気味な顔をしている。
市場の食堂は地元の人が食べに来るので、街中よりは多少安いが、それでも半身のさらに半分程度で300円ほど。ブラジルの物価から考えたらかなり高級な食材だ。
他の魚の数倍の値段はするが、炭火でやかれたタンバキは脂が乗っており身はしっとりしホッケに似た味わいだが、今まで食べた焼き魚の中でも1位2位を争うほどうまく、これは値段が高いのもうなずける。
マナウス付近で釣りや観光を2週間ほど楽しんだ後、再びハンモック船に乗船しベレンへ。
大西洋へ
最後の目的地はマナウスから1,500km、4泊5日の距離にある河口の都市ベレンだ。

都市から都市への移動という事でベレン行きの便よりも混雑しており、今回は乗船のタイミングも悪く、客室の中央付近と風通しも悪ければ見晴らしも皆無といった残念な場所取りになってしまった。寝るとき以外は甲板に出て景色を眺める時間が多くなったが、刻々と変わる空の色や、形や幅に変化のあるアマゾンは一日見ていても飽きることは無い。
今回の船は食堂が無いので、食事は寄港先で乗り込んでくる弁当屋さんから購入。

売り手によっては港から直接長い棒を渡して、乗船客に弁当を売る人がいる。まるで映画なんかで見る、国鉄時代の駅弁売りが窓からやり取りをするの光景のようだ。棒の長さは5m近くあり、棒の先に弁当を入れた袋を取り付け、受け取ったら取り付けてあるかごの中にお金を入れて回収するシステムだ。
長い棒なのでバランスをとるのが難しそうで、よく落とさないで受け渡しできるなー、と感心して見ていたが、ちょいちょい弁当を落とし、中には弁当売りのおじさんが港に落ちることもあり、周りの人は心配する様子はなくそのたびに歓声が上がるので、落ちたり落としたりは毎日の事なのだろう。
弁当は米と肉の入ったシンプルなものだが、九州よりも大きい中州のマラジョ島の付近を航行中は、近くの村から小型ボートに乗って航行中の船にしがみつき、縁をよじ登って物を売ってくる村人がいる。
色々なものを売ってくれるのだが、持ってきた商品の中にかごに入ったエビに目が留まる。
それは素揚げされた川エビで、山盛りに入って一かご10レアルなのでお買い得だ。即決で一かご購入。

揚げたエビとくれば、常温でぬるくなったウイスキーを飲んでる場合ではないので、売店でキンキンに冷えたビールを買い、景色のいい場所に座ってぶしゅっと開ける。
塩のきいたエビはカリっと揚がって香ばしく、冷えたビールでゴクゴクと流し込む。

青い空、深い緑、茶褐色の川、頬をなでる心地のいい風。なんと至高の時間だろうか。
刻々と変化していく空の色、滔々と流れるアマゾンの雄大な流れ。雑然とした船内でハンモックに揺られ、見知らぬ国を旅をする。
自転車旅も面白いが、自然を身近に感じる船旅も気持ちがいいもんだ。
この流れも、もう少し下れば川幅は10kmを超し大西洋へと注ぐだろう。
ほどよく酔った僕は陽が落ち夜のとばりが下りるまで、アマゾンのパノラマを見つめているのであった。
文・写真・syo/提供元・たびこふれ
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