人間の記憶は脳の海馬が担当している。その人間の海馬も年を取るにつれ次第に機能を低下させ、認知症に陥る人も出てくる。マインド・パレスと呼ばれる海馬の機能はまだ完全には解明されていないが、人間の記憶は非常に選択的に機能していることに気が付く。「人間は考える葦」というより、「人間は記憶を選択しながら生きている存在」という思いが湧いてくる。都合の悪いことは忘れ、自分にプラスとなる出来事は絶対に忘れないばかりか、肥大化する傾向がある。

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ベトナムの革命指導者ホー・チ・ミンの霊廟前で祈祷を捧げる文大統領(2018年3月23日、ベトナムのハノイで韓国大統領府公式サイトから)

以上は、当方が韓国の文在寅大統領時代(在任2017年5月~2022年5月)に書いたコラムの一筋だ。文政権は当時、徹底的に日本を批判し、「正しい歴史認識、歴史の見直し」をキャッチフレーズにして、日韓請求権協定(1965年)で解決済みであることを忘れ、慰安婦問題などをテーブル上に乗せて日本を追求していった。その文政権の政治を見て、大多数の日本国民が当時、多分感じていたように、「韓国人の記憶の海馬はどうなっているのか」ど嘆かざる得なかったのだ。

幸い、その文大統領が5年の任期を終え、昨年5月、保守系の尹錫悦大統領が登場した。その韓国のソウルから7日、驚くようなニュースが流れてきた。「ソウル発時事」の記事を先ず紹介する。

「ベトナム戦争に派兵された韓国軍による民間人虐殺で家族や自身が被害を受けたとしてベトナム人女性が韓国政府を相手取り賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は7日、韓国政府に約3000万ウォン(約300万円)の賠償を命じる判決を言い渡した。ベトナム戦争での韓国軍の民間人虐殺を巡り、韓国政府の責任を認めた判決は初めて。今後提訴が相次ぐ可能性がある」

韓国はベトナム戦争時代、米国の要請を受け軍隊をベトナムに派遣した。韓国軍は1964年9月から1972年まで約31万2000人をベトナムに派兵した。この期間中、韓国軍によるベトナム民間人虐殺は80件で、被害者数は9000人以上に達するものと推定され、「韓国軍はベトナムでは最も残虐な軍隊」という汚名で恐れられていたほどだ。