日本の「同性婚」論議はいよいよ最終コーナーに入ってきている。岸田文雄政権下の同性愛問題に関連する問題発言がその流れをプッシュしている感じだ。ジュネーブの国連人権理事会で先月31日、「普遍的・定期的審査」(UPR)作業部会の日本人権セッションが開かれたが、そこでも加盟国から日本の同性婚の認知が遅れている、といった批判の声が聞かれた。

ミケランジェロの作品「アダムの創造」(Wikipediaより)
そこで「同性婚」問題について少し頭を整理したい。
第1は人間の「性」は生物学的にみれば「男」と「女」の2性だ。1960年代に世界的に広がった<ウーマンリブ運動>は、歴史的に男性支配の世界で様々な被害を受けてきた性「女性」の解放運動だった。それに引きずられ「性」革命が時代のうねりとなっていった。フランスのシモーヌ・ド・ボーヴォワールは、「人は女性に生まれるのではなく、女になるのだ」と主張し、「第二の性」で男性主導の社会での女性差別の撤回を訴えてきた。
女性の権利が次第に回復されてきた頃、今度は<ジェンダーフリー運動>が台頭してきた。性的少数派(LGBT)がその権利をアピールしてきた。ジェンダーの問題では、生物学的な「男」と「女」の2性間の問題を扱うだけではなく、セクシュアル・アイデンティティ(性的指向)とジェンダー・アイデンティティ(性自認)を合わせた意味合いが含まれてきた。具体的には、ゲイやレスビアン、バイセクシュアルなどの性的少数派を意味する一方、トランスジェンダー、シスジェンダー、ジェンダーフレキシブルといった性自認が含まれている。
その結果、性的指向と性自認には様々なジェンダーが浮かび上がってきた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、2014年の段階でその性的指向と性自認のジェンダーの数は70を超えている。近い将来、その数は更に増えることが予想されている。
ウーマンリブ運動、それに続くジェンダー運動は性差、性的指向への差別是正を目的としてきたと言えるだろう。ただ、両者は密接な関連がある。男と女の生物学的な「性」の中には、生まれた時から男性的と女性的な指向、傾向が埋め込まれているからだ。
霊長類学の世界的第一人者、オランダ出身フランス・ドゥ・ヴァール氏(Fransde Waal)はチンパンジーの赤ちゃんを研究して明らかにしている内容だ。生まれた時から、雌のチンパンジーの赤ちゃんは女性的な仕草や行動をし、雄のチンパージーは男性的な行動を見せたというのだ。「性」の中に男と女の「2性」の性的指向が埋め込まれているというのだ(おもちゃの人形を置いておくと雌の赤ちゃんはそれを抱っこしたりしてかわいがるが、オスは壊して中をみたりする)