あらゆるリスクに覚悟する態度

もちろん、筆者はあまりにも過剰な備えはよくないと思っている。たとえば、「外の世界は危険がいっぱい!車が走り、変質者がうろついているので自宅にこもって生活しよう」となれば、今度は日光浴不足でビタミンD欠乏や運動不足、またそもそも人生が楽しくなくなるのでQOLは下がる。1の潜在的リスクを消すために3のダメージを負うことは愚かである。だが、生きるということそのものもリスクを内包する。要はバランスが重要なのだ。

しかし、起こり得る想定外はできるだけ想像しておき、最悪の事態に覚悟する態度は必要なのではないだろうか。たとえば将来的に必ずやってくるという南海トラフ巨大地震については、いざ地震が起こっても直ちに大津波や地盤破壊で生命の危機に瀕しないような場所を選ぶとか、資産比率100%日本円のポートフォリオでは被害状況によっては、地震で再起不能なダメージを負いかねない。

こうした場合、地震はいつか来るという前提に立ち、いざそうなっても復活できる最低限の状況を作っておくのが良いと思うのだ。市場はこの巨大地震リスクはその現実的タイミングの織り込んでおらず、無視して動いているかもしれない。だが個人レベルでは織り込んでおいて損はないだろう。

また、将来的な健康についていえば過剰な節制は窮屈でも、酒や煙草、塩分過多や糖質・脂質過多、運動不足くらいには気をつけておくことで健康寿命を伸ばすことができるだろう。「そんなに長生きしたくはない」という人でも、少なくとも生きている間は健康でいたいはずだ。「今の健康体は永遠ではない」という想像力を持つことで、日々の生活習慣にも変化をつけることができる。逆に想像しない限りは、変化は訪れないことになるだろう。

想像力が欠如すれば、想定外のダメージを負いかねない。怖がり過ぎ、備えすぎだと人生はかえってコスト高になるが、想像力がなさすぎても寿命を大きく縮めることになるのではないだろうか。

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