米国大手ファーストフード、マクドナルドがロシアから撤退というニュースを聞いた時、ロシア軍のウクライナ侵攻を理由に欧米諸国が一斉にロシアに制裁を科したという事実を肌ではなく、胃袋で理解したモスクワっ子も少なくなかったはずだ。当方は「これでビックマックを食べれなくなるのだな」という思いがわいてきて、少なからず同情した。

スターリングラード攻防戦勝利80周年に献花するプーチン大統領(2023年2月2日、クレムリン公式サイトから)

当方は旧ソ連・東欧共産圏時代、ハンガリーが民主化直前、東欧でマクドナルド第1号店が開店するということで、ブタペストのマクドナルドのオープンの日、ブタペスト市民と共に店の前で並んでドアが開くのを待った1人だ。そのマクドナルドのモスクワ店が閉鎖するのはプーチン大統領にとってはたいしたことでないかもしれないが、若いモスクワっ子には寂しかっただろう。

対ロシア制裁を受け、西側の企業は次々とロシアン市場から撤退したと考えていた。米国の報復措置を恐れる銀行との間で問題が発生するリスクも大きいからだ。しかし、現実はそうともいえないのだ。スイス公共放送(SRF)が発信するウェブニュース国際部からニュースレター(2月2日)が配信されてきた。結論からいうと、西側企業のロシア市場からの大規模な撤退はまだ実現していないのだ。

SRF発信の記事は、欧米の対ロシア制裁はどうしたのか、西側企業はなぜロシアから撤退しないのか、といった問題について説明していた。以下、SRFのニュースレターの概要を読者にも紹介する。

ザンクト・ガレン大学とIMDビジネススクールが1月13日に発表した調査では、マクドナルド、ルノー、シーメンスといった大企業がロシアから撤退する一方で、欧州連合(EU)と主要7カ国(G7)で事業を行う企業の圧倒的多数は、ビジネスを続行、あるいは撤退の計画を完了していないことが明らかになったという。

世界最大級のグローバル企業情報データベース「Orbis」によると、ロシアがウクライナに侵攻した昨年2月24日の時点で、EU・G7企業1404社が所有する合計2405支社がロシアで活動していた。昨年11月下旬段階でロシアを拠点とする支社を少なくとも1社売却した企業は8.5%と、1割にも満たなかったというのだ。