他人に期待しない
「こうやるべきでしょ?」「普通はこうするでしょ?」。
かつてはこのような感覚を持っていた。しかし「べき」「普通」という言葉には相手に対する強い期待感が込められている。だが本質的に他人とはわかり合うことはできない。理解を共有できる一部分を見つけても、その他の部分はまったくのブラックボックスというのが普通だ。
だから徹頭徹尾、今は他人には何も期待しない。「期待しない」というとネガティブに聞こえるが、これは「諦めの境地」というより「執着を手放せた」という方が正確な表現である。執着は人をネガティブにする。だからこれを完全に捨てた。
「気を利かせて事前にこうやってほしい」とか「言わなくても気持ちをわかってほしい」を完全に止めただけで、ものすごく楽になり相手に怒りや失望はゼロになった。その逆に、想定外に深く共感してくれたり、気遣いをしてもらえると飛び上がるほど嬉しいと感じるようになった。
怒りはかっこ悪いと理解するよく怒っていた時期は「自分を怒らせる相手が悪い」という思考だった。しかし、今は完全に変わった。人前で怒りを出してしまうような稚拙な態度はカッコ悪い、という考え方に変わった。
人間は焦っている時、怒っている時など感情的になる時は知性が著しく下がる。その証拠に普段は饒舌な人でも、猛烈に怒っている時は言葉が原始的になり、複雑な意思決定ができなくなる。つまり、シンプルに怒ると能力が低下するので損をする。
また、社会的に見て怒っている人を見て男らしくてかっこいい、勇ましいと思う人はいない。「感情をコントロールできないカッコ悪い人」と思われるか、下手をするとスマホで隠し撮りをされてSNSで笑いものになるだけである。よく電車内で怒っている人が、SNSで笑いものになっているのを見る度にそう思う。
しかし、分かっていても変わるのは簡単ではなかった。そんな筆者を一発で変えたきっかけが妻とのやり取りだった。
ある時、先方の不動産業者に大変不誠実な対応を受けた。相手はウソをついて約束を破り、こちらは大変な迷惑を被った。自分は内心、かなりの怒りを感じたが妻は自分を制して前に出た。相手と冷静に対応をし、穏便かつこちらに有利な条件で交渉を済ませた。
「よくあの場で怒らなかったな!忍耐力すごいな!」と妻にいうと、「こういう時は感情的になった方が負けなのよ。それに同じ内容を伝えるにも、怒りをあらわに伝えるより冷静に穏やかに、でも毅然と伝える方が不誠実な相手には効くのよ」と返ってきた。これは見習いたい、と感じてそれ以降はこの対応を真似るようになった。
◇
現在は上記3つを徹底しているので、怒ることはもうない。万が一、不誠実な対応をされても「交通事故にあったようなものだ」と割り切って、即損切りをして二度と連絡を取らなければいい。
人生は怒って過ごしていいほど長くない。どうでもいいことに囚われず、さっさと前進するべきなのだ。
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