その一方で、彼らは大手企業や食品メーカーの安定して太い契約を持っていて、10年、20年間ずっと同じレベルの収入を安定的に維持している。中小零細企業でもオーナー経営者だと、サラリーマン以上に安定的に高額な役員報酬を得続ける人はいる。そういう人たちにとっての1000万円は「単なる通過点」という感覚に近いのではないだろうか。田舎でも知名度ゼロで小金持ちのオーナー社長という人は結構いる。
その一方でフリーランスは事情が違う事が少なくない。もちろん、トップインフルエンサーで別次元に稼ぎまくって目立つ人がいる。だが、それはフリーランス全体のコンマ数%程度でしかない。
大手クラウドソーシングのランサーズの2021年に発表実態調査によると、日本のフリーランスは全労働者の24%、1670万人であり全体的な平均年収は200万円に留まる。そして企業経営的に稼いだり、影響力を活用できるインフルエンサー、または高度な専門職という例外を除けば、労働集約的でクライアントワークで働くフリーランスにとってたとえ年収が1000万円でもかなり心もとないと感じるケースが多いはずだ。
たとえばフリーランスYouTuberも栄枯盛衰のレッドオーシャンであり、仮に一時的に1000万円稼げても来年、いや数ヶ月先はどうなるか分からない。米国メガテックIT系プラットフォームに依存する脆弱性は想像以上に大きい。「将来不安で虎の子の資金に手を付けることなどできない」というのが一般的だろう。世間的には華やかそうに見せている人たちも、実際の生活は質素に暮らしているという人は少なくないのだ。
東京と地方の年収1000万円の異なる事情最後に住む場所による違いである。結論的に東京23区内で家族で住む場合と、地方に住む場合とでまったく違う感覚があるはずだ。
東京では新築マンションは8000万円を超えており、渋谷区や港区などの特区では1億円をゆうに超える。賃貸でもワンルームで10万円以上、というオーダーだ。家族で広々とした空間に住み、子供を私立学校に通わせ、塾通いとなると年収1000万という金額でも「心もとない」という人も少なくないだろう。
一方で地方ではまったく事情が異なる。筆者は長く、東京と大阪に住んでいたのでその感覚が抜けきれないまま熊本県に移住した。そのため、ここに来て住居のあまりの安さに驚いた。昨年、YouTubeの撮影用にオフィスを借りたのだが、東京の2分の1…いや3分の1くらいの価格であり、一人で使うために借りたのに家族4〜5人住めてしまうほどの広さがある。地方で年収1000万あれば、豊かすぎるほどの生活を送ることができるだろう。
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年収1000万については、立場や職業、場所によって全然感覚が違ってくる。会社員、フリー、経営者と一通り色々と体験してきた筆者の視点で取り上げただが、概ね大外れということはないと思っているがどうだろうか。
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