マイクロフルフィルメント実現の「3つのポイント」

ZARAをヒントに在庫偏在による機会ロスを激減させる!ジュンの「マイクロフルフィルメント」
(画像=RFOPの店舗アプリ画面、『DCSオンライン』より引用)

MFSの構築に当たって、乗り越えるべき課題が大きく三つあった。

一つ目が、新たな配送システムに対応できる配送ベンダーの確保だ。通常、商品の集荷・発送を行うベンダーとの契約は店舗ごとに行っている。店舗ごとに在庫を融通し合うMFSでは、それを全国一律のルールで対応してくれるベンダーの存在が不可欠だった。

今回、ジュンは日本郵便と提携し、全国一律でキロ数に応じた料金を換算して請求する統一の仕組みを構築した。

二つ目は、出荷指示の最適なコントロールだ。MFSの実現のためには、注文した顧客の居住地データをもとに「どこの店舗から送るか(from)」と「どこに送るのか(to)」を最適化し、タイムリーに出荷指示を出す仕組みが不可欠。その仕組みを、楽天をパートナーに、RFOP(Rakuten Fashion Omni-channel Platform)を活用して「Total Logistics Control」を具現化した。

三つ目は、店舗側の業務負荷をできるだけかけない運用の仕組みだ。「これが最も重要」と中嶋氏は強調する。

「店舗スタッフの主業務は、言うまでもなく接客。来店したお客さまの対応だけでなく、最近ではSNSやライブコマースなどでの発信業務も増えている。MFSを着実に運用するためには、彼・彼女たちに負荷が上がらないようにアシストをしなければならない」

そこで導入したのが、楽天と東芝テックが開発した「RFOP(Rakuten Fashion Omni-channel Platform)店舗アプリ」だ。この「RFOP店舗アプリ」と、通信ツールとしてLINE WORKSを店舗のモバイル端末にインストールして使用している。自店舗の在庫が他店舗によって引き当てられるとLINE WORKSに瞬時に通知が届く。店舗で在庫を確認して発送準備を整えたらRFOP店舗アプリに登録することで在庫が確保される。こうして店舗側の負荷を下げる工夫も怠らずに運用体制を整えた。                    

「ヒエラルキー型」から「ネットワーク型」への大転換

ZARAをヒントに在庫偏在による機会ロスを激減させる!ジュンの「マイクロフルフィルメント」
(画像=『DCSオンライン』より引用)

こうして構築したMFSを、ジュングループでは順次導入し、対応店舗を増やしている状況だ。「全国340店舗中、約200店舗まで説明会を終えたところ。最終的には全店舗で使えるようにしたい」

MFSの導入効果について、中嶋氏は「欠品の機会ロスを回避することで、最終的には導入店舗の年間売上の5〜10%の改善は確保できる」と試算する。

加えて、「年間で22万件を超える」という店舗から店舗への商品のヨコ移動の削減コストも「削減効果は約2.5億円」と見込む。今後、取り扱うブランドごとにどのくらいの機会ロスや配送コストが減らせたかをKPI化し、効果を検証していく。

ジュングループのMFSの取り組みは、「これまでの商品配送のシステムを『ヒエラルキー型』から『ネットワーク型』へと転換するもの」と中嶋氏は語る。

これまでの在庫管理・配送システムは、中央集権的なピラミッドのもとで一つのヘッドクォーターが在庫をコントロールする「ヒエラルキー型」だった。それを、個々の店舗が自律して、より近い店舗どうしで在庫を融通し合い、「最も速く、移動コストの少ない」最適な配送ルートを自動で選定するのが「ネットワーク型」だ。

それくらい、ジュングループのMFSの試みは、従来のアパレル業界の配送システムを大きく転換するといってもよいだろう。日本のアパレル業界のスタンダードになるのか、注目したい。

提供元・DCSオンライン

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