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言語化力を磨くための練習術
言葉はデザインツールのひとつ

言語化力を磨くための練習術

少年B:
デザインの言語化が大事なのはわかったんですが、言語化力を磨くコツはありますか?

こげちゃ丸:
ベタですが、これはもう経験を重ねるしかないと思います。……と言われても、初心者は「なかなか案件を任せてもらえないんだよ」と言うかもしれません。でも、自分で考えることはできますよね。

たとえば、ぼくは街中で見た広告の「背景」を想像したりします。これを見てください。今日ここに来るときに電車のなかで見かけた、『SOYJOY サツマイモ』の広告です。

少年B:
おいしそうですね。

こげちゃ丸:
ですよね。でも、気になる部分がいくつもあります。「これ、たぶん、みんな好き。」ってコピー。文字がすこし芋に重なっていますよね。重ねないほうが見やすいはずなのに、どうしてだろう……とか。

少年B:
あー、言われてみれば確かに!

こげちゃ丸:
あとは「NEW」の部分、黄色が背景色よりもビビットだし、よく見てみると「NEW」の文字も赤みが強いですよね。どうして商品パッケージの色に合わせなかったんでしょう。

「大豆イソフラボン」「ソイプロテイン」の文字がちょっと読みにくいけど、これは今回の広告の訴求ポイントではないのかな、とか。

少年B:
わたしの感想と差がありすぎてびびりますね。考えもつかなかった……。

ベテランデザイナーほど「デザインの言語化」を大切にする理由
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

こげちゃ丸:
あとは、さつまいもの断面が合わないですよね。これは何本も焼き芋を割って、いい断面のものをいろいろ探したのかな……とか、そういった現場の光景まで思い浮かびます。

こんな風に、目に入ってきた広告について、そのデザインの背景を想像してみる。これも経験だと思うんですよ。今日からだってできます。

少年B:
その背景から、デザインの意味や意図を考えてみる、というか……。

こげちゃ丸:
ええ、この断面の芋を選んだ理由が必ずあるはずなんです。もしクライアントから「どうしてこの芋を選んだんですか?」と聞かれて、デザイナーが答えられなかったらどうですか?「別の芋でもいいじゃないか」となりますし、だったら極論「芋を背景にしなくてもいいじゃないですか。別案を考えましょう」となってしまいます。

少年B:
おおー……そう言われてみれば確かに。会社の広告として、ちゃんと承認されて世に出たわけですもんね。理由があるはずなんだ。

こげちゃ丸:
もちろん当事者じゃないので、ぼくの想像が当たっているとは限りませんが、「デザインができたプロセスを、担当デザイナーになりきって説明してみる」というのはいい練習になると思います。自分が若いころにやっていたことですが、歩きながら街ゆく人の服装を観察してみたり。

経験がないなら、そうやって「自分で経験を作ってみる」というのもひとつの方法だと思うんですよね。

言葉はデザインツールのひとつ

少年B:
この本は若手のデザイナーさんや、デザイナーを目指す人たちにぜひ読んでほしい本だと思うんですが、そういう方々に向けて一言お願いします。

こげちゃ丸:
ぼくは言葉を「デザインツールのひとつ」だと考えています。あるデザインがあって、それを上司やクライアントさんに伝えるためのツールですね。

たとえば、頭のなかに浮かんだデザインを形にするとき、デザイナーならPhotoshopやIllustrator、After Effectsといったツールを使いますよね。それと同じで、言葉というツールを持っていたほうが、豊かなデザイン提案ができると思うんですよ。

少年B:
そう考えると、言語化が苦手というデザイナーも取っつきやすいかもしれませんね。ツールであれば、勉強すれば使えるようになりますし。

こげちゃ丸:
デザイナーは何かしらのツールを使って「表現」をする仕事です。なので他のデザインツールと同じように、言葉でも「表現」できたほうがいいと思っています。

ベテランデザイナーほど「デザインの言語化」を大切にする理由
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

こげちゃ丸:
でも言語化と言われると、急に苦手意識が出てしまうデザイナーは多いんですよね。言葉も表現ツールのひとつだと思って、嫌悪感を抱かないでほしいなと思います。上司に「これ言語化できてないね」と言われたら、素直に受けとめてツールの習得に励んでみてください。

少年B:
たとえば上司に「Illustratorのこの機能がうまく使えていないね」と言われたら、素直に勉強しますもんね。ほんとにツールと同じと思えばいいんだ。

こげちゃ丸:
最近はそうでもなくなってきましたが、かつてデザイナーは「絵描き」みたいに見られることが多かったんです。ぼくだって昔は「デザイナーに言葉はいらない、絵で語るべし」と思っていたぐらいで。

少年B:
うーん、わたしもデザイナーって言われると、なんとなく芸術家っぽいイメージがありますね……。クリエイティブな仕事だからかな。

ベテランデザイナーほど「デザインの言語化」を大切にする理由
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

こげちゃ丸:
でも、デザインとアートは違うんですよね。アートは受け手にゆだねるもので、デザインは課題を解決するための手段であることがほとんどです。課題を解決する人には、クライアントに対する説明責任があります。歯医者さんが「うまく説明できないけど治りました」って言ったら、二度とそこには行きませんよね。だからこそ、言語化は大切なんです。

少年B:
確かに、どんな治療をしたか説明できない歯医者さんはいやだな……!

こげちゃ丸:
じつは、活躍しているデザイナーで、言語化に取り組んでいない方ってほぼいないんです。言語化スキルを身につけるのは時間がかかりますが、デザイナーとしてずっと働きたいなら、やっておいて損はありません。

それに、デザインは、人の心を動かすためにあるとぼくは思います。デザイナーである以上、絵で表現するのは当然ですが、言葉でもそれができれば、もっといいと思いませんか?

少年B:
なるほど……。

こげちゃ丸:
どうしても苦手意識を持たれがちな「デザインの言語化」ですが、自分のデザインをもっとよくしたいと思っている人にこそ、ぜひ取り組んでもらえたら嬉しいです!

少年B:
読んでくださったみなさん、本の感想はぜひ「#デザインの言語化」でツイートしてみてくださいね。

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ベテランデザイナーほど「デザインの言語化」を大切にする理由
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

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ベテランデザイナーほど「デザインの言語化」を大切にする理由
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

(執筆:少年B 編集&撮影:じきるう)

提供元・Workship MAGAZINE

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