Workship MAGAZINEの人気連載「デザインの言語化ってなんだろう?」が本日、書籍『デザインの言語化』(左右社)として発売されました!
でも、どうしてデザインに「言語化」が必要なんでしょうか。今回は『デザインの言語化』著者のこげちゃ丸さんに、改めてその理由を教えてもらうことにしましょう。ついでに、言語化力を磨くためのコツについても教えてもらいました!
こげちゃ丸
クライアントワークを中心に活動している、描いたり書いたりしているデザイナー。商品デザインからビジネスコンセプトづくりまで、幅広い領域で悪戦苦闘の毎日です。2023年1月31日、著書『デザインの言語化』が発売になりました。(Twitter:@onigiriEdesign)
聞き手:少年B
フリーライター 兼 Workship MAGAZINE副編集長。連載「デザインの言語化ってなんだろう」の編集を担当するほか、さまざまなメディアでインタビューライターとして活躍したりしなかったりしている。(Twitter:@raira21)
目次
デザインを言語化できれば、承認が取れる
デザインを言語化できれば、無駄な労力が減る
デザインを言語化できれば、承認が取れる
少年B:
この度は出版おめでとうございます! こげちゃ丸さんは「デザイナーには言語化能力が必要」と本の中でもおっしゃっていますが、そう思ったきっかけや、デザインを言語化するメリットについて伺いたいと思います。よろしくお願いします。
こげちゃ丸:
そもそも言語化ができないと、上司やクライアントの承認が取れないんです。とくにクライアントワークって、デザインの良し悪しでは決まらなくて、むしろ他の要因で決まることも多いんですよ。
先方にプレゼンをしても「ウチの社長が青色が好きだから、青にしてください」とか「上司がこう言うので……」とか。そうやって決まっていくことが意外と多いんです。デザインがどうこう以前の話なんですよね。
少年B:
デザイナーとしては、正直ちょっとつらいですよね。自分の魂を込めて作ったデザインがそんな理由で決まってしまったら。

こげちゃ丸:
だからこそ、自分の描いたデザインを言葉で説明して、納得してもらう必要があるんです。
ただ、「このデザインはこういうイメージで作りました」「こんなニュアンスを持たせています」という、デザイナーが込めた想いを説明するわけではありません。もちろんそれも大切なことですが、じつはクライアントにとってはどうでもいいことなんですよね。
じゃあどうすればいいかというと、「このデザインによって、こういう行動をとってもらえます」とか「こういう成果が得られます」とか……。そのデザインを選ぶことで、どのような効果があるのかを言葉で説明するのが大切になってくるんです。もちろん、社内交渉かクライアントワークかによっても変わってくるんですが。
少年B:
ちゃんとデザインによる効果や利点を伝えなきゃ、独りよがりになってしまうんですね。
こげちゃ丸:
とくにクライアントワークだと、相手にデザインに対する知識や理解があるとは限りません。というか、そもそも十分な知識や理解があるなら自分たちでできるはずで、外部に頼む必要がないと思うんです。
だからこそ、デザイナーは「目に見えるデザイン」だけではなく、目に見えない部分、つまりデザインによる態度変容や行動変化を説明できる必要があるんです。

少年B:
デザインのことがわからない相手に、デザインによる効果で伝える必要があると。でも、思い通りの結果が出なかったらどうするんですか?
こげちゃ丸:
もちろん、どんなにいいデザインを作っても、毎回思った通りの効果になるとは限りません。それでも、「こういった意図で、こういう成果を目指して作っています」と説明できることが大切なんです。
もし出したデザインが世の中に響かなかったとしても、狙いとズレてしまった原因を言語化できれば、次回に活かすことができますから。
少年B:
狙いを言語化できなければ、なぜうまくいかなかったかも言葉にできないわけですもんね。なるほど……。
デザインを言語化できれば、無駄な労力が減る
こげちゃ丸:
それと、デザインを言語化できれば、スケジュール通りに物事がすすむんですよ。
少年B:
どういうことですか?
こげちゃ丸:
たとえばクライアントさんに「とりあえずアイデアがほしいので10案持ってきてください」と言われたら、9案はボツになりますよね。10案作るのはデザイナーも大変ですし、時間がかかります。
でも「A・B・C、3つの方向性があるので、それで作りませんか?」と提案することができれば、無駄な労力をかける必要も減ります。

少年B:
確かに……。闇雲にただ「10案いいデザインを作れ」と言われても大変ですもんね。また方向性を絞った粒ぞろいの3案なら、やり直しも少なそうです。
こげちゃ丸:
まさにおっしゃる通りで。やり直しの数が減るということは、周りの人たちも「このプロジェクトはだいたいこの時期に終わるな」とわかるわけですよね。そうすると、次の仕事も入れやすい。
少年B:
修正が続いて、予定通りに行かない仕事は「炎上案件」とか「デスマーチ」なんて言いますが、やり直しの数を減らすことで回避できると。
こげちゃ丸:
やり直しを減らすコツは、返しに一貫性を持たせることです。最終的にA案とB案どっちにしよう?と迷ってしまったら、これまでのプレゼンで話したことと一貫性のあるほうを選ぶ。矛盾のあるデザインは、どこかがおかしくなってしまうので、クライアントも引っかかってしまいますよね。
デザイナーも時にはデザインに迷うこともありますが、言語化をしておくことで、その言葉が道しるべになります。
少年B:
なるほど……。

こげちゃ丸:
気をつけたいのが、あくまでもデザインの言語化は「デザインの方向性や狙いについて伝える」ためにするのであって、相手を論破するためのものではないということです。
自分の仕事をやりやすくするために言葉で相手を丸め込むのは、デザイナーとして間違っています。ぼくも過去に苦い思い出がありますが、こうなると自分のデザインに自信が持てなくなってしまうし、クライアントも「いつもうまいこと言いくるめられているな」と不信感を抱いてしまいます。
少年B:
あくまでも、言語化はいいデザインを伝えるためのものであって、相手を打ち負かすためのものではないと……!