iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者は年々増え続けているが、加入者が死亡したらそれまでに積み立てた資産はどうなるのだろうか。死亡後に必要な手続きや資産の取扱いについて確認しておこう。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金は3種類の給付金のうちの1つ
iDeCoの給付金には「老齢給付金」「障害給付金」「死亡一時金」の3種類がある。
老齢給付金は原則として60歳以降に受給を開始できる年金資産。障害給付金は加入者が70歳までに一定の障害状態になった場合に請求できる給付金。死亡一時金は加入者の死亡後、遺族が請求することで受け取れるものだ。
加入者がiDeCoの引き出し可能な年齢である60歳を待たずして亡くなった場合でも、死亡一時金は遺族に支払われる。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金の給付金額は請求後3ヵ月以内に確定する
iDeCo(イデコ)の死亡一時金は老齢給付金や障害給付金と違い、年金受取の選択はできない。その時の資産が一時金として請求者に給付される。
給付金額はiDeCoの資産全額だが、死亡一時金の給付金額が確定するのは請求が行われてからだ。請求されてから3ヵ月以内にiDeCoの資産が現金化されその資産額が死亡一時金の給付額になる。
iDeCoの資産は投資信託でも運用できるため、運用期間が短いなど場合によってはそれまでの積立金額より給付額が少ない可能性があることも知っておきたい。
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iDeCo(イデコ)の死亡一時金の請求手続きの流れ
遺族が死亡一時金を受け取るためには、加入者のiDeCo口座を管理する銀行や証券会社に給付請求を行う必要がある。
iDeCoを取り扱う金融機関は「運営管理機関」と呼ばれ、死亡一時金の請求などの手続きは原則としてiDeCoを申し込んだ金融機関で行う。手続きの流れは死亡者の状態によって異なることもある。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金の請求は運営管理機関に連絡
iDeCoの死亡一時金の請求に当たっては、運営管理機関に連絡し「死亡等届出書」と「死亡一時金裁定請求書」を提出する必要がある。記入内容は死亡者の基礎年金番号や住所、請求者の続柄など基本的な項目だが、たとえば配偶者が請求する場合では以下の書類を一緒に提出しなければならない。
- 死亡を証明する書類(死亡診断書)
- 死亡者の戸籍謄本
- 請求者の戸籍謄本(死亡者と別戸籍の場合のみ)
事実上の婚姻関係を明らかにする書類
iDeCoは加入している人の掛金納付状況によって区分が分かれており、掛金をその時点で納めている人を「加入者」、掛金の納付を中断している人を「運用指図者」と呼ぶ。事情により掛金を拠出できない場合や、60歳以降に会社を定年退職した場合も運用指図者に含まれる。死亡者が加入者でも運用指図者でも、死亡一時金を請求するには、まずはiDeCo口座のある金融機関に連絡して書類を提出することになる。
自動移換者はiDeCo(イデコ)を実施している金融機関で必要書類を入手する
iDeCoでは加入者と運用指図者以外に「自動移換者」になっている人もいる。自動移換者は過去に勤務先で企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していた人が、退職後6ヵ月以内に何も手続きしなかった場合に該当する。
自動移換されると資産は国民年金基金連合会が管理し、運用できない状態で手数料だけ引かれていく。
自動移換者の資産を死亡一時金として請求する流れは基本的に同じだが、特定の金融機関でiDeCo口座が管理されていないため、iDeCoを実施している銀行や証券会社などの運営機関である金融機関に連絡して、「死亡一時金の請求手続き」にかかる書類を取り寄せる必要がある。
自動移換者の死亡一時金請求手続きは特殊なケースであり、窓口ではなく各金融機関が設置しているiDeCoのコールセンターに電話したほうがいいだろう。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金の受取には手数料がかかる
手数料はほとんどの金融機関では振込1回あたり440円(税込)だ。自動移換者の死亡一時金の場合だと4,180円(税込)がかかってしまう。また、本人の死亡届提出が遅れたことで死亡後も掛金が引き落とされていた場合には、その分を還付する手数料として別途1,048円(税込)もかかってくる。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金を受け取れる遺族の範囲と優先順位
iDeCoの死亡一時金を受け取れる遺族の範囲は規約で定められており優先順位も決められている。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金を受け取れる遺族は生計を共にした人が優先
iDeCoの死亡一時金を受け取れる遺族の優先順位は以下の通り。
優先順位 | 対象者 |
---|---|
第1位 | 配偶者(内縁関係を含む) |
第2位 | 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうち生計を維持されていた者 |
第3位 | 2位以外の生計を維持されていた親族 |
第4位 | 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうち2位に該当しない者 |
iDeCoの死亡一時金は通常の相続人とは異なる順位であり、生計を共にしていた人が優先されるようになっている。その意味において、実父母よりも養父母、実祖父母よりも養祖父母のほうが優先順位は高くなる。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金は受取人を指定できる
iDeCoの死亡一時金は規約によって優先順位が定められているが、生前に本人が受取人を指定できる。指定できる範囲は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であり、iDeCo口座のある金融機関で手続きすればいい。
iDeCoは生命保険と違って申込の段階では受取人を指定する手続きがないため、規約の優先順位と異なる遺族を指定したい場合は忘れずに手続きしておこう。
iDeCo(イデコ)の死亡一時金の請求権利は5年間
iDeCoの死亡一時金は一定の遺族が受取人として定められているものの、遺族から請求しなければ自動的には受け取れない。請求の期限も本人の死亡後5年間と定められており、その間に請求がないと死亡者の相続財産とされ、受取には他の相続人と遺産分割協議が必要になることもある。
また、iDeCoの死亡一時金は死亡後3年以内では相続税、3年から5年は一時所得、5年経過すると相続財産の扱いになる。
遺族にスムーズにiDeCoの死亡一時金を受け取ってもらうためには、書面などでわかるようにしておくのがいいかもしれない。
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iDeCo(イデコ)に加入していることは家族で共有しておきたい
iDeCoは生命保険と違い、積立金を遺族が受け取ることを前提にしていない制度である。そのため遺族が請求できるのを知らなかったり、忘れてしまったりすることもある。
死亡後に自分の資産を家族に使ってもらうためには、あらかじめ家族で共有しておくか、生命保険の書類などと一緒にiDeCoの請求についてわかる書面を保存しておきたい。
文・國村功志(資産形成FP)
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