■飯島 勝矢氏 コメント

【データ】「シニア世代における新型コロ流行前とコロナ禍、withコロナ時代の外出・社会参加影響調査」
(画像=『観光経済新聞』より引用)

医師 医学博士
東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター 教授
東京慈恵会医科大学卒業、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座助手・同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、2016年より東京大学高齢社会総合研究機構教授、2020年より同研究機構教授・機構長、および未来ビジョン研究センター教授。内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員、厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」構成員、日本学術会議「老化分科会」メンバーなどを歴任。

「コロナの問題は、全ての世代に大きな影響を及ぼしたが、なかでも高齢者の方々に対して大きな負の足跡を残した。特に最初の1年間においては、確かに多くの方々を重症化させ、そして命までも奪ったケースは少なくない。そして、もう一つ忘れてはいけない要素が『コロナ・フレイル』である。コロナ禍における自粛生活の長期化により、自立機能を維持している地域在住高齢者にまで生活不活発を強いることになり、その低活動を基盤とするフレイル化を進めてしまう、いわゆる健康二次被害としてのコロナ・フレイルを助長したのである。具体的には、我々が全国で展開している住民同士でのフレイルチェック活動において、コロナ前との比較をしてみると、筋肉減弱(サルコペニア)が進行し、栄養の偏りも助長し、認知機能も低下させ、家族や地域交流の中での会話もできないため、滑舌も顕著に低下していることが分かった。

しかし、初期の変化だけではなく、2年間の追跡をしてみると、新たな知見が見えてきた。まず、このコロナ禍であっても心身機能の低下を示さない高齢者も一定割合存在し、その方々はコロナ感染予防を徹底しながらも、さまざまな地域交流や地域活動が途絶えなかった方である。また、多様な機能低下を示した方であっても、ワクチン接種後に活動を徐々に再開し、低下した身体機能が徐々に回復傾向の方々も少なくない。さらに、忘れてはならないことが、今回の自粛生活を通して最低限の自立機能をも失ってしまい、不可逆なレベルになってしまった高齢者も少なくない。一人で公共交通バスに乗って買い物に行っていた高齢者が、もうバスにすら乗れなくなってしまったケースもある。身体機能も認知機能もこの2年間で急激に低下してしまったのである。

高齢者は現役世代のように筋トレなどで身体を鍛え直すことはなかなかできず、むしろ地域活動や地域交流のなかで結果的に身体を動かしている現実がある。コロナ禍での初期の頃の経験を十分に活かし、感染予防と地域交流の両面をバランスよく考え、地域の中で『集う場、絆を生かして会話を楽しむ場』などを上手に再開し、徐々に増やしていくべきなのであろう。

そこで、たとえ足腰の衰えが進んでしまった方でも、WHILLなどの移動手段を今まで以上に気軽に活用し、まずは外にお出かけしたり、もしくは出先でWHILLに乗りながらみんなと一緒にエンジョイしたりするなど、色々と便利な使い方がある。乗ることに躊躇するのではなく、思い切って乗って大きく移動することにより、新たな景色を見ることができる。まずはエイヤっと踏み出してみよう。きっと新たな世界観、新たな自分に出会うことができるだろう。

今まさに求められる対策は、『コロナ感染に対して賢く恐れながら、自分の日常生活のレベルを決して落とさず、積極的に外出をしよう!住民主体活動の歯車を止めないようにしよう!』という考えが重要なのである。そして、産官学民連携の下、新たな地域づくりに向けて、勇気をもってチャレンジしていく時期なのである」

提供元・観光経済新聞

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