クライアント様のパートナーとして、同じ目線で事業に向き合うことを大切にするマーケティング集団「The Hill Office(THO)」が、クライアント様と越えてきたチャレンジを実際にクライアント様に語っていただく企画「We are your partner」。クライアントとエージェンシーそれぞれの視点から、ビジネス課題解決の肝を探ってゆきます。
第3回は、お客様のデジタル変革を支援し、そのビジネスを成功に導くデジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供されている、株式会社リコー(以下、リコー)のSenior Vice President 大谷渉様との対談をお届けします。
近年は360度カメラ/360度動画カメラ『RICOH THETA(以下、リコー シータ)』や関連ソリューション『RICOH360』をはじめとした、リコーの新規事業領域を約20年あまり担当される大谷様。世の中でまったく新しいソリューションが産まれたきっかけや込めた思い、そしてTHOとともに挑む課題に関してお話を伺いました。

時間と空間を超える「360度コンテンツ」
―― RICOH360の誕生秘話、ミッションに関して教えてください
「時間と空間を超える」ことをコンセプトに360度コンテンツ関連ソリューションを開発しました。時間に関して具体的に述べると、同じ場所を違う時期ごとに見られることです。観光地であれば春夏秋冬、仕事であれば作られる過程など、タイムマシン的な要素を指しています。空間に関して言えば、エベレストなどの訪れることが困難な場所を疑似体験できることです。
特にビジネス領域と親和性が高いと感じていて、どのように世界中の仕事領域にRICOH360のバリューを提供してゆくのかが我々のミッションであると感じています。コンシューマ商品としてRICOH THETAを作ったときからそれは感じていて、現在は産業横断的なプラットフォームになることを目指しています。
―― 複写機やカメラを世に送り出されてきたリコーにとって新しいチャレンジですね
おっしゃる通り、リコーはカメラの会社でもあるし、複写機の会社でもあります。我々は複写機ビジネスを「画像処理ビジネス」「画像ビジネス」と呼んでいたりしますが、「画像」を使った新しい価値を作れないか考え続けたことをきっかけにスタートしたビジネスが、360度コンテンツ関連ビジネスでした。
例えば、カメラで撮影する写真は空間を切り取ったものですが、空間を切り取らないモノ「写場」を提供できるモノが欲しかった。写真の歴史を振り返ると、昔はハレの日に記念で撮影してきた歴史から、スナップショットへとカジュアルに価値が変化し、現在はスマホで撮影できるように変化していった。貴重な記念写真から「写メ」のようなカジュアルなものへの変化です。写メは、仲間内でしかわからないコンテクストが多分に含まれていて、いわば写真を使ったコミュニケーションの性質を帯びています。そうした変化を見るうちに、空間としても全体を捉えることでさらに伝わるコミュニケーション手段があるのでは、と感じました。カメラで撮影を行うときの「切り取り方」に芸術性があったのも事実だが、「空間のそのままを伝えられる」というコンセプトに新しさを感じていたのです。

日本と欧米の決定的な違いである「システム思考」
―― 日本発SaaSとして、RICOH360はグローバル展開もされていますね
「時間と空間を超える」ことでの価値そのものは、グローバル共通だと感じています。サービスを展開させる中で、不動産業界からの反響が大きかったのは発見でしたが、今となっては必然だったとも思っています。物件を見る場合は、部屋を訪れることが出来ない人には、可能な限り部屋全体を見たいという需要がそもそも圧倒的に多い。部屋を内覧できた人も、後になってソケットやコンセントの位置など自由視点でレビューできる。いつでもみられるという「時間の超越」、行かなくても見えるという「空間の超越」は、地域の違いはなく普遍的な価値観と欲求です。
―― ビジネス展開に可能性が見える一方で、欧米ならではの苦労はありましたか
ビジネスとして考えたときの欧米と日本との違いは、欧米がシステムからビジネスを作りこむということです。SaaSの世界は特にその傾向が顕著です。端末づくりが得意な日本は、お客様の要望に応えて積み上げてゆく発想が主流であったことから、システム思考がビジネスを作るベースであるネットワークやSaaSの世界で成功例が少ない。グローバルにRICOH360の展開を成功させ、日本からでもSaaSを成功させることが出来ることを見せたいですね。SaaS+Boxと我々は呼んでいるが、我々はSaaSだけではなく、いい端末と一緒に良いシステムを売れば世界で勝てると思っています。