それに対して慰安婦は日韓請求権協定のときには知られていなかったので協定の対象外だという理由で、その未払い賃金を請求しようと考えた日本の弁護士がいました。彼らは韓国で原告を募集し、 慰安婦の損害賠償訴訟を日本で起こしました。その弁護士の一人が(社民党議員の)福島瑞穂さんでした。
同じ論理で韓国政府も慰安婦への賠償を求めましたが、そのときは慰安婦は請求権協定の対象外だったから新たに賠償が必要だ、という話でした。これは1990年代のアジア女性基金や2015年の慰安婦合意で、日本が譲歩して終わったはずでした。
ところが2018年の大法院判決では、普通の労働者についても「不法な植民地支配による日本企業の反人道的な不法行為」に対する慰謝料は、日韓請求権協定の対象外だとしました。つまり植民地支配は強制なので、その時代の労働はすべて強制労働だというのです。
これは慰安婦が「広義の強制」だという人々の論理ですが、これだと請求権協定は意味がなくなり、戦前の朝鮮人労働者は、徴用も募集もすべて日本企業から慰謝料を取れます。元慰安婦はもう30人ぐらいしかいませんが、元労働者と遺族はその1万倍以上いるので、これは慰安婦よりはるかに大きな問題です。
他にもこの種の訴訟がたくさん起こされ、日本企業70社以上が対象になっています。これを放置すると、韓国にある日本企業が片っ端から訴訟を起こされ、資産を没収されます。そこで差し押さえられた新日鉄住金の資産が現金化される前に、日本政府は対抗措置をとったわけです。
それを「対抗措置は日本にとっても利益にならない」と批判する人がいますが、経済制裁というのはそういうものです。韓国のルール違反に何も制裁しなかったら、ますます違反はエスカレートし、日韓関係は国交のなかった1965年以前の状態に戻るでしょう。