ではこれから12年間の戦いの火ぶたを切る(佐藤氏が12年間社長をやる意ではありません。トヨタは2035年にレクサスの全EV化を発表済みで、世界各地のEV導入計画もその頃の目標時期が多くなっています)においてどのような経営戦略が予想されるでしょうか?

個人的にはEVへのシフトは不可避だとみています。但し、以前から何度も指摘しているようにEVという車を作ればよいだけではありません。最大のポイントは消費者への啓蒙、次いでインフラ整備です。戦略的には社会的インフルエンサーにまず、EVに乗っていただく、そして、徐々にすそ野を広げていくということだろうと思います。

一方、軽自動車など小型車のEV化は実用面で日本には適しています。地方で日常の足として使うような場合、自宅で簡単に充電でき、普段使いとしての潜在需要は極めて高いとみています。特に地方でもへき地になるとガソリンスタンドがないという問題が今後、確実に生じてきますが、電気なら家で充電できる点でむしろ、インフラの逆転現象が起こりうるとみています。

個人的にはEV専用のプラットフォーム開発に踏み込むでしょうし、場合によってはEVと内燃機関の会社を分社化するぐらいのチャレンジもアリだと思います。分社化が有利だと考えるのは車屋さんに特有の「こだわり」が全社規模の「右向け右」という指令に納得できず、統率感が出せないからです。特に創業家の豊田氏のようにカリスマ性がある場合は別ですが、佐藤氏の場合は「あの若造が…」と陰で言われることも当然起きるでしょう。よってEV推奨派が別会社としてやったほうがよりまとまりが出るのです。そして内燃機関と競わせたらよいのです。

私はこの変革期の行方はまだわからないとみています。EVでも今のスタイルではまだダメでもう少し乗り手を安心させる仕組みが必要です。例えば極寒の場合どうなるのか、遠出してそこでチャージャーがすぐに見つかるのか、あるいは待たずにチャージできるのか、などいろいろあります。私なら日本の旅館が駐車場にチャージャーを整備すべきだと思うのです。そうすれば朝には充電完了ですよね。あるいは完全に充電が無くなった時の予備バッテリーという発想もありでしょう。簡単なアイディアなんですがなかなか誰も思いつかないし、やらないですね。

佐藤氏の手腕に期待しましょう。そして豊田氏は会長として自社や自動車業界を引き続き引っ張るだけではなく、日本経済のリーダーとして活躍して頂きたいものです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月27日の記事より転載させていただきました。