(3)アルゴリズム紹介

Amazonのグローバルハッカソンで入賞!衛星データを使った山火事リスクの低減アルゴリズムの紹介
(画像=『宙畑』より 引用)

処理の大きな流れを上図に示します。処理は大きく二つ、①炭素貯蔵量マップの作成と②枯れ木マップの作成に分けられ、①と②を組み合わせて③燃料マップを作成します。

①炭素貯蔵量マップの作成

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(画像=『宙畑』より 引用)

炭素貯蔵量の計算には、スタンフォード大学のInVestという無料のアプリの中にある、Carbon Storage and Sequestration modelを使いました。

インプットは、土地被覆図と、その土地被覆図のクラスの炭素プールテーブルです。
アウトプットは、単位面積あたりの炭素貯蔵量(単位:トン/ヘクタール=1ピクセル)となります。

インプット:土地被覆図
土地被覆図は、ASDIの提供しているデータの一つである、ESAのWorldCover(解像度10m)を使いました。私達のターゲットとした地域では、10種類の被覆の種類(森林、水域、牧草地、市街地など)があります(マングローブはない地域)。

インプット:炭素プールテーブル
10種類の被覆それぞれに対して、文献などから単位面積あたりの炭素貯蔵量(単位:トン/ヘクタール)の平均値を設定し、被覆に応じた以下のような炭素プールテーブルを作りました。

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(画像=『宙畑』より 引用)

▲10種類の炭素プールテーブル

アウトプット:単位面積あたりの炭素貯蔵量

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(画像=『宙畑』より 引用)

▲単位面積あたりの炭素貯蔵量

(白っぽいエリアが高炭素貯蔵量エリア、黒っぽいエリアは水や人工建物など炭素が低い場所)

Outputは上記に示した通り、単位面積(1ピクセル)に含まれる炭素貯蔵量になります。

私達が使ったWorldCoverは、2020年のものだったので、OutputのTiffファイルには、2020年時のターゲットとするエリアでの炭素貯蔵量がピクセルごとに表示されているマップになります。

②枯れ木マップの作成

①で作成した炭素貯蔵量マップは2020年時点のものなので、2022年の現在の様子を知るために、2020年から2022年で枯れ木に変化した場所を把握します。

枯れ木のマップについては、私達のチームは過去に、森林の中の枯れ木を検出するモデルをディープラーニングを用いて作成していました。その際に使用したデータは光学画像である、Sentinel-2です。

こちらのモデルには、2枚の画像をインプットとして使います。今回は、2020年の夏の画像と、2022年の夏の画像を使用しました。

このモデルは、最初の画像では健康的だったけれど、次の画像で健康状態が悪くなっている樹木の位置を検知します。

今回の例では、2020年の時には健康だったけれど、2022年では健康状態が悪くなり枯れてしまった樹木の位置を検知します。

Sentinel-2の私達が使っている画像の解像度は10mにリサンプリングされているので、正確には1本1本の枯れ木の位置は検知できませんが、ある程度まとまって枯れ木になっている場所を検知します。

③燃料マップの作成

①で作成した2020年時の炭素貯蔵量のマップと、②で作成した2020年から2022年にかけて枯れ木になった場所のマップをかけ合わせて平方根を取り、2022年時点での、燃料マップ(燃える可能性のある乾燥した木材が多い地域)を作成しました。

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(画像=『宙畑』より 引用)

▲燃料マップ
(赤で示したエリアが枯れ木があるエリアで、濃い赤になるほど、プライオリティが高い)

左上は解像度500m,右下は解像度2000mです。

Amazonのグローバルハッカソンで入賞!衛星データを使った山火事リスクの低減アルゴリズムの紹介
(画像=『宙畑』より 引用)

このテーブルは、解像度2000mでの燃料マップです。XYで場所が示されています。この地域で火災が発生したときの、山火事削減活動のプライオリティに役立てるように作成しました。

衛星データを扱って苦労した点

まず取り掛かった時期が遅かった(締め切り2週間前から始めた)ので、時間的に厳しかったというのが一番大きいです。

私たちは、SageMakerを以前に使ったことがなかったので、まずSageMakerで何ができるのかを知り、私たちが見せたいと思っていることをSageMakerを使って実現させるのに、2週間はギリギリの時間でした。

個人的には、炭素プールテーブルの作成が大変でした。

こちらにも記載してあるように特定の地域の炭素貯蔵量を探すのは難しい場合が多いです。

こちらのサイトを参照することが多いですが、すべてのクラスの炭素貯蔵量が記載されていない場合もあるので、論文をあたってみたり、いろいろなところから情報を集める必要がありました。

まとめ

本記事では、Amazonが主催する国際的なハッカソンで入賞を果たした、森林火災のリスクマップの作成について、チームメンバーの風間さんに紹介していただきました。

今回ご紹介したデータの多くはオープンソースであり、皆さんもアクセスできるものとなっています。興味を持った方は、ぜひデータに触って見ていただければと思います!

提供元・宙畑

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