新型は高効率2リッター直4ターボ搭載。走りは軽快&スポーティ!

新型は「衝撃の7代目」というべきだろう。新たな一歩を踏み出したことは理解しているものの、「SLは最高のメルセデス」という思いが強い筆者は、ちょっと複雑な思いで7代目のステアリングを握った。走行ルートは東京都内から自宅の京都までの往復。都合1000km以上、その走りを味わった。

日本のSL43は、中間グレード。 「43」ということは、つまり2リッターの直4ターボ(M139型)を積んでいる。もちろん普及版というわけではなく、「1マン1モーター」にこだわったAMG謹製である。スペックはエンジン単体で381ps/480Nm、これにモーター(10kW/58Nm)を組み合わせて、マイルドHVシステムを構成。史上最強かつ最高の4気筒、との呼び声が高い。とはいえSLに4気筒エンジンは似合わないと思う方も多いだろう。欧州では2種類のV8グレード、63と55が用意されている。

スタイリングは、正統派のパーソナルスポーツ。従来のリトラクタブルハードトップをやめ、カラーコーディネーションが楽しめるソフトトップの復活はうれしい。2+2レイアウトは、日常面で大きなメリットがあることは911が証明している。

とはいえ実物を見ても、まだ少しワダカマリがあった。どこか威厳に欠けているように思える。ひと世代前のSLのようなギラギラした印象に乏しい。そこでふと思い直す。派手な出立ちは他に任せて、SLはもう少し上品に、オトナのためのオープンカーを目指したのではないか、と。そう思って見直せば、シンプルで滑らかなフォルムがカッコよく見えてきた!

【最新モデル試乗】衝撃の7代目は2+2の2リッタースポーツ。AMGの一員となった新型SLの先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】衝撃の7代目は2+2の2リッタースポーツ。AMGの一員となった新型SLの先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

乗ってみれば、これがけっこうスポーティな走りを見せるので驚いた。4気筒エンジンを積んだことで、「鼻先の軽さ」というメリットが生まれた。ノーズの軽快で鮮やかな動きは、まさに操るという感覚。重厚なクルーザー感には欠けるものの、それはV8を積む55や63の領域ということなのだろう。その昔、6気筒ユニットを積むベーシックなSLクラスに乗ると思いのほかファン・トゥ・ドライブであったことを思い出した。

43エンジンのパワーは十二分だ。スペックだけ見るとはSL用として多少物足りなく感じるかもしれないが、F1テクノロジーの活用という電動ターボがいい仕事をしている。エンジンの反応は機敏。どんな場面でもほしい力を手に入れることができた。燃費もなかなか優秀だった。なるほど6気筒SLのダウンサイザーだと思えば納得もいく。

気になった点は、9速スピードシフトMCTのマナーだ。新型SLは全車が多板クラッチのトルコンレスATを積んでいる。このミッションの低速域のマナーはいただけない。ギアチェンジがスムーズにいかず、ギクシャク感がどうしても出てしまうのだ。スリップロスの少ないクラッチシステムで、回転数の高い領域ではその小気味よさがうれしいけれど、車庫入れなどでいつもスムーズさに欠けるのは興醒めというもの。日本の市街地では、おや?っという場面に多く出遭った。

一方、グランドツーリングカーとしての性能は素晴らしい。最新の運転支援が正確に作動し、気分がいい。だからこそ細かな点が気になってしまう。メルセデスのフラッグシップというべき伝統のネーミングだけに、今後の進化を見守りたい。そしてできれば日本でもV8モデルに乗ってみたいものである。

【最新モデル試乗】衝撃の7代目は2+2の2リッタースポーツ。AMGの一員となった新型SLの先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】衝撃の7代目は2+2の2リッタースポーツ。AMGの一員となった新型SLの先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

メルセデスAMG・SL主要諸元

【最新モデル試乗】衝撃の7代目は2+2の2リッタースポーツ。AMGの一員となった新型SLの先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

グレード=SL43
価格=9SAT 1648万円
全長×全幅×全高=4700×1915×1370mm
ホイールベース=2700mm
トレッド=フロント:1660/リア:1625mm
車重=1780kg
エンジン=1991cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=280kW(381ps)/6750rpm
最大トルク=480Nm(48.9kgm)/3250〜5000rpm
モーター最高出力=10kW
モーター最大トルク=58Nm(5.9kgm)
WLTCモード燃費10.8 km/リッター(燃料タンク容量70リッター)
(市街地/郊外/高速道路:7.4/11.2/13.2 km/リッター)
サスペンション=前後5リンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:265/40R20/リア:295/35R20+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=4名
最小回転半径=6.1m