ウクライナへの独製攻撃用戦車「レオパルト2」の供与に躊躇するドイツに対し、欧米諸国から圧力が強まっている。ポーランドのモラウィエツキ首相は23日、ドイツ政府に対し、国内にあるレオパルト2のウクライナ供与を正式に申請すると発表したばかりだ。欧州メディアによると、欧州全土にレオパルト1と2は約2000両ある。ロシア軍と戦闘するウクライナに供与できるだけの量はある。ただ、レオパルトの製造元ドイツ政府の承認がない限り、第3国に譲渡できない。それだけに、ドイツのショルツ政権に圧力が高まるわけだ。

「世界経済フォーラム」(ダボス会議)で演説するショルツ首相(2023年1月18日、独連邦首相府公式サイトから)

ショルツ連立政権は社会民主党(SPD)、環境保護政党「緑の党」、そしてリベラル政党「自由民主党」(FDP)の3党から成る連立政権だ。緑の党とFDPのジュニア政党はレオパルトのウクライナ供与を支持している。「緑の党」のベアボック外相は22日の記者会見の場で、「同盟国が願うのならば、(レオパルト供与の)道を塞がない」と述べ、慎重な姿勢を崩さないショルツ首相の意向を無視している。また、独南西部のラムシュタインにある米空軍基地で開催された20日の「ウクライナ防衛コンタクト・グループ会議」でドイツのボリス・ピストリウス新国防相がレオパルトの供与決定を先送りしたことに対し、連邦議会安全保障委員会のマリー=アグネス・シュトラック=ツィマーマン委員長(FDP)は「大きな失策だ」と批判した。

SPD、「緑の党」、FDPの3党の間には政治、経済、安保問題で大きな違いがあるため、政権運営の中で連立政権内で対立が生まれてきても不思議ではないが、国際社会が注目するウクライナ防衛支援問題でドイツ政権の政策決定力の弱さを露呈したことになる。欧米メディアでは「ウクライナへの支援問題でドイツがブレーキとなっている」といった論調が目立つ背景となっている。

そこで今回、「なぜショルツ政権は……」というより、「なぜショルツ首相はレオパルト供与に抵抗するのか」について、これまでの情報をまとめたい。ショルツ首相はパリで開催されたエリゼ条約(仏独協力条約)60周年記念式典後の記者会見でも繰り返したが、ウクライナへの武器供給問題では3原則を標榜してきた。具体的には、①可能な限りウクライナを支援する、②北大西洋条約機構(NATO)とドイツが戦争の当事国となることを回避する、③ドイツ単独で決定しない、の3原則だ。

ウクライナへの攻撃用戦車供与問題では、ショルツ首相は③を強調する場面が増えてきた。ウクライナへの武器支援でドイツが他の同盟国より先だって実施することを控え、米国、英国、フランスなどの同盟国と歩調を合わせて支援したいのだ。

欧米で対ウクライナ支援にドイツ批判が高まっていることに対し、SPDの中では、「ドイツは援助額でも他の同盟国より多く支援してきた。支援を渋っている、といった非難は遺憾だ」という声が聞かれる。