ところで、エコノミスト、ボリス・ガーシュマン氏は専門誌「Plos One」の中で、啓蒙され、高度に発展した西側諸国でさえ、依然として多くの人々が魔女(の存在)、魔術を信じている、という研究結果を報告している。
同氏の研究では2008年から17年の間にピュー・リサーチ・センターがインタビューで収集したデータが利用されている。そこでは、95カ国の14万人を超える人々からデータが集計されている(中国、インド、アフリカとアジアの一部の国は参加していない)。
ガーシュマン氏によれば、回答者の40%以上が魔女の存在、魔術を信じている。ただし、国によって割合は大きく異なる。スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国では、魔女信仰は約9%と最も低く、オーストリアではドイツと同様、約13%だ。アフリカのいくつかの国では魔女の信者が多く、チュニジアではほぼ90%という。
ガーシュマン氏は、魔女信仰と相関する個人的および社会的要因を分析している。高等教育を受け、安全な経済基盤を持つ人々は、無宗教の人々と同様に、超自然的な力を信じることは少ない。その一方、社会レベルで魔女信仰を助長している要因として、国家の制度が弱く、社会の統制機能が不安定で、国民経済が停滞している、等々が挙げられている。
また、個人や見知らぬ人への不信感が強い社会では不合理な信念をもつ人々が出てくる。一般的に、魔女を信じている国の人々は幸福感に欠け、人生に悲観的で自制心が少ない。経済発展やイノベーションは期待できない。近代的な生活様式と伝統的な生活様式が混合した社会では魔女信仰が見られやすいという。
まとめると、国家が不安定で、社会制度が脆弱、経済発展は停滞し、人生に対して悲観的なムードが強い社会では、魔女、魔術信仰が見られやすいという。逆にいえば、社会が幸福感に包まれ、経済が順調に発展しているような社会、国家では魔女信仰は見られず、魔女狩りといった社会現象は少ないというわけだ。
「あなたは魔女(の存在)や魔術を信じますか」と日本人に聞けば、大多数の日本人は侮辱されたような気分になり、「そんな原始的、非近代的な信仰は持ち合わしていない」と一蹴するだろう。
その一方、社会の負の現象や経済的停滞感の犯人捜し(スケープゴート)を意識的、無意識的に始めている。そして2022年、その犯人は旧統一教会だというわけで、冷静に考えることなく、政府、メディアは総動員で旧統一教会バッシングを始めているわけだ。文字通り、魔女狩りだ。
現代の日本社会は、魔女狩りが行われた欧州の中世時代のようだ。ただ、欧州の魔女信仰やそれに関連した魔女狩りには程度の差こそあれキリスト教の影響があったが、日本の場合、共産主義という“偽宗教”が魔女狩りをプッシュしている。魔女や魔術を信じない日本人が魔女狩りに乗り出すという風景は異様だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。