黒坂岳央です。
人間の本性は普段は、なかなかその姿を見せることはない。多くの人は本性を簡単に見せることは避ける。だから時折、普段は紳士的な態度を取る人でも、怒れる本性を顕在化させてしまうことがあるのだ。
そして筆者は、ほとんどの人が隠しきれず本性を出すタイミングが2つあると信じている。結論を先に言えば「余裕がない時」と「相手より圧倒的に立場が強い時」である。

-Robbie-/iStock
人は普段、理性で言動をコントロールしている。内心では怒りを感じた時、ストレートに相手にそれを見せることはせず、理性というブレーキで見せないようにする。だが、それができなくなる瞬間がある。それは追い詰められて余裕がなくなった時だ。
筆者は過去にこれを強烈に感じた体験がある。ビジネス駆け出しの頃にある発信者(ここではA氏とする)と一緒にフードイベントのコラボをしたことがあった。筆者は自社のフルーツを提供、A氏は飲料サービスを提供した。結果的にはまずまず成功し、イベント参加者からの入金があった。その場の話し合いでA氏ではなく、その場はひとまず筆者が売上金を預かることになった。
「それでは経費や原価の計算書を作成した上で後日、最終損益計算書を出します。それを見て了承頂けましたら、すぐにご指定の口座へ振込をします。1週間程度の時間を頂きたいので来週水曜日までお待ち頂けますでしょうか」とA氏に伝えて了解を得て、その場は終わった。
だが、さっそく翌日の夕方からA氏によるしつこい入金の催促が入るようになった。筆者は逃げるつもりなど毛頭なく、むしろ自分の取り分は少なくなってでも一生懸命イベントを盛り上げてくれたA氏へ感謝の気持ちを示すべく、彼に按分割合を多めに支払いたいとすら思っていた。
しかし、A氏はまるでこちらがお金を持ち逃げすると思っているほどの疑心暗鬼で執拗に「一刻も早く僕にお金をください!」と非常に語気を強め、ある種の異常性を感じるほどの取り立てを始めた。あまりにもこちらへの不信感を隠そうともしない取り立ての態度のA氏の対応に不満を抱き「とにかく早く関係を終わりにしたい」と思い、筆者は明らかに多めに代金を支払った。支払日は約束していたより数日間早いタイミングにした。
送金の連絡を入れた瞬間、A氏は入金額に満足したらしくそれまでの憤怒の表情が普通に戻り、「あなたを最初から信用していました。もしも急かしてしまったらすいません。またイベントにぜひ呼んでください」と瞬間的に柔和な態度に戻った。
A氏はSNSのアカウントでは「温厚な性格でビジネスではお金、お金していません。信用第一!」という趣旨のプロフィールを出している。だが、筆者には彼の本性はとてもそうには感じられなかった。むしろこれほどお金、お金している人とコミュニケーションを取ったことは一度もなかったので「人の本性はプロフィールには現れないのだな」と強く感じた出来事だった。
筆者からは彼を追い詰めた記憶は何もなく、約束したことはすべて期日前に履行して誠実さに務めていたつもりだったが、経済的な逼迫か何かが彼の隠された本性を引き出したのではないかと推測している。