「歴史は繰り返すのではなく、韻を踏む」とは、作家マーク・トウェインの名言で知られます。筆者も好きでよく引用しますが、足元の動向は、まさに“歴史が韻を踏んでいる”かのようです。
下院議長選出の混迷劇が南北戦争前とリンクする一例、というお話は既にお伝えした通りです。第1回目で米下院議長選出ができなかった歴史を振り返ると、そのうち13回は南北戦争が始まった1861年の20年以内に集中し、1位の133回は1855年に記録しました。2位は1849年(63回)、3位は1859年(44回)でしたよね。
当時を振り返ると、経済、社会情勢も同じように”韻を踏んで“いるようにみえます。
チャート:1849~1860年までの主な出来事
(作成:My Big Apple NY)
1856年から補足しますと、奴隷制を重視していた民主党はピアース大統領からブキャナン氏に鞍替えする政治ドラマが発生。1859年にはペンシルベニア州で石油が発見され、鯨からせっせと採取していた油から灯油が急展開し、米国におけるエネルギー確保の優位性が高まったわけです。その翌年の1860年に共和党から泡沫候補だったリンカーン氏が大統領選に勝利し、翌年に南北戦争に突入し米国の歴史が大転換を迎えることになります。
つまり新たな資源発見や領土の拡大、大量移民による人口増加、産業構造の変化を通じた経済勃興期にあたったわけです。また、工業化した北部と奴隷制を活用した黒人奴隷による労働集約型だった南部の格差が浮き彫りになりました。その結果、巨万の富を築く者が誕生した一方、新たな移民などとの貧困層との格差が急拡大した時代と位置付けられるでしょう。
これを現代に置き換えるなら、資源開発=シェール革命とGAFAを始めとしたIT企業の発展、産業構造の発展=テクノロジー企業の隆盛とギグワーカーの誕生などによる格差拡大、大量の移民による人口増加=南米からの移民大量流入――などに置き換えられるのではないでしょうか。
“南北戦争”以来の米国の下院議長選出の混迷劇は、まもなく迎える大変革への序曲だったり?