2023シーズン守備に大きな変化はなし
2020シーズンから続く長谷部茂利監督下のアビスパ福岡。最大の強みは間違いなく「堅守」である。昨シーズンリーグ最少の29得点に留まりながらJ1残留できたのも、リーグ3位タイの38失点に抑えた守備があったからこそだ。
FWまでを含めた全員が高い守備意識を持ち、前線を突破されても前寛之と中村駿がコンビを組むボランチを中心としたMF陣が立ちはだかる。ディフェンシブサードに侵入されたとて、抜群の高さと強さを持つセンターバック(CB)を中心としたDF陣が壁となり、最後は守護神のGK村上昌謙が防ぎきる。幾重にも敷かれた陣形で、ボールを保持されながらもゴールは許さない。
2023シーズンに向けても、この守備に大きな変化はない。ボランチの主力である前と中村。CBの主力である奈良竜樹、宮大樹、ドウグラス・グローリ。守護神の村上。全員がチームに残り、屋台骨は微動だにしていない。唯一、左SBの志知はサンフレッチェ広島に移籍したが、横浜FCのJ1昇格に貢献した亀川を獲得し対応。チーム最大の武器は揺るがないだろう。
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2023シーズン攻撃の舞台は空中から地上へ?
一方、強みを維持した守備陣と対照的に、攻撃陣には不安が残る。昨シーズンまではサイドからのクロスに高さのあるFWが合わせる形が主だったが、結果に結びついていない。クルークスのポジションにはFC東京から紺野を、フアンマのポジションには東京ヴェルディから佐藤を獲得したが、そもそもリーグ最少得点の陣容だ。単純な足し算では強力といえず、高ささえ失ったように映る。
この点が前評判に影響しそうだが、長谷部監督はおそらく、攻撃の場を空中から地上へと移そうとしているのではないか。
FW陣の顔触れは昨シーズン10得点を挙げ出し手にも受け手にもなれる山岸祐也を軸に、広いスペースでのスピードと献身性を持つルキアン、動き出しとシュートセンスで勝負する佐藤、コンタクトの強さと豪快なシュートを備えるジョン・マリなど。圧倒的な高さで勝負するタイプはおらず、SHもカットインを得意とする紺野や金森健志、突破力が持ち味の田中達也らが主戦。グラウンダーのパスにドリブルを組み合わせた、新たな形を模索するのだろう。それは、2022シーズンに目指しながらも陣容と噛み合わず、志半ばで諦めたものでもある。
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