IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は、「戦闘で原子力災害が発生しないようにしなければならない。非常に現実的なリスクだ」と強調、そのために、①原発にIAEA専門家を常駐させる、②原発周辺を原子力安全/セキュリティ保護エリアと設定し、非戦闘地帯として如何なる戦闘も中止する、という2点を提案し、ロシア側とウクライナ側の間の合意を促してきた。
グロッシ事務局長は17日、ウクライナ政府の要請を受け、IAEAのリウネ原発支援サポートミッション(ISAMIR)を立ち上げ、南ウクライナ原発でも同じようにスタートした。同事務局長によると、18日にチェルノブイリサイドに、そして数日以内にフメルニツキー原発にIAEA専門家ミッションを派遣する。ZNPPには既に2人、最大4人のIAEA査察官が昨年9月以来、常駐している。
同事務局長はまた、SUNPPではウクライナのヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー大臣、ウクライナの原子力会社エネルゴアトムのペトロ・コーチン社長、およびウクライナ原子力規制局のオレー・コリコフ局長らと次々と会談した。
グロッシ事務局長は、IAEA旗の掲揚式典後、「ウクライナの原子力発電施設とチェルノブイリの現場に専門家を配置することで、ウクライナでの悲劇的な原子力事故を防ぐための技術活動を強化していく」と述べ、IAEAの原発安全にかけた意気込みを表明している。
IAEAのウクライナ原発リポート(1月17日)によると、ウクライナの南ウクライナ、リウネ、フメリニツキーの3原発では、エネルギーインフラストラクチャーをターゲットにしたロシア軍のミサイル攻撃への予防措置として週末、出力を削減した。ウクライナからの情報によると、電力レベルはその後回復。また、キーウへのミサイル攻撃がキーウ研究所の敷地内の倉庫で火災を引き起こした。このサイドには燃料が取り除かれた研究用原子炉があり、その炉心はサイドの使用済み燃料貯蔵施設に保管されている。負傷者はいなかった。放射線モニタリングが実施され、変化は測定されていない。
ロシアのプーチン大統領がロシア軍をウクライナに侵攻させてから来月24日で1年目を迎える。戦闘は長期化の様相を深めている。ウクライナの原発でいつ事故が発生するか分からない。グロッシ事務局長が提案したように、ロシアとウクライナ両国は原発周辺を非戦闘地帯に指定すべきだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。