参院選前の有権者から見る争点としては、コロナ禍後を見据えた景気対策がその柱だったのだが、安倍元総理暗殺によって、争点が大きく変わっていった。選挙とは常にそのような時代を背景に流転するものであり、安倍元総理暗殺によって停滞したものと進んだものとがある。その両面が相剋するのが政治だ。

現在、コロナ禍によって変容した社会の実相に、国民自らが転換を迫られている問題と、逆に時代の変容に適応しきれない政治家は淘汰される運命にある。安倍元総理が任期中に徹底して攻撃されたモリカケサクラ問題にしても、野党で先頭切って安倍元総理を糾弾していた野党議員の多くは、2021衆院選、2022参院選で議席を失った。本当に野党追求が行ったことに正義があり、有権者が賛同していたなら、彼らが落選することはなかっただろう。政治家は落選すればただの人になり、地位を失う。それはつまり、有権者がその生殺与奪の権を握っているわけで、私はポリコレが間違っているとは思わないが、誤った世論誘導は政治家にとっての自殺行為となるという証明を、落選議員は体現したに他ならない。

2022参院選が突きつけた課題は、明らかに景気回復以外の何者でもなかったが、では野党の主張に国民や世論を喚起するだけの主張があったかと言われれば、指導力や自民党以上の公約を打ち出せる野党は無かった。それがそのまま結果となって現れたのだ。

野党が暗中模索から抜け出せないのは何故か?

そんな2021衆院選の投票率56%と2022参院選の投票率52%を通して見えてきた点は、① 野党の不甲斐なさ、② 有権者の意識変容、③ 政策の柱が無いの三点と考える。

言い換えれば、それらが見えていないからこそ野党は議席を伸ばせないでいるように思えてならない。

① 野党の不甲斐なさ

安倍一強の中、憲政史上最長を誇った第二次安倍政権は、6度にわたって国政選挙を行い、いずれも勝利に終わっている。これは安倍元総理が強いのではなく、野党が弱かったという点に尽きる。

安倍首相「国政選6連勝」の軌跡 安定の得票、異例の長期政権

私は、折に触れ安倍晋三という政治家ほどリベラルな政治家はいないと公言してきた。第一次安倍政権の経験を踏まえつつ、菅官房長官の口説き落としを受けて互いに盟友となって、第二次安倍政権を発足させた。安倍元総理はただ一つ、デフレ脱却と憲法改正を大きな旗印に掲げつつ、外交において日本の地位の更なる向上を目指した地球儀外交を展開してきた。

海外からはその点を注目されるが、私は、むしろ国内問題に積極的に取り組んできた点が大きかったと考えている。国内経済はバブル崩壊以後、瀕死の状態でデフレが長く続いた。好景気だった日本を知らない世代が中心の日本で、デフレ不況が当たり前の社会を大きく転換する大胆な金融緩和に踏み切ったのが大きい。

中でも雇用状況が大きく好転した点だ。経済の大原則として、雇用が安定しなければGDPの増加も企業の活性化も始まらない。しかも、本来、それらの政策は労働者側に立つ政党が打ち出さなければならないが、それが出来ないから旧民主党は四部五裂した。それが旧民主党の体たらくを表している。 その意味で、政権交代を見据えてアベノミクスを打ち出した第二次安倍政権は、政治家に必要なダイナミズムがあったのだ。

野党には、それが無い。

モリカケサクラで失われたのは、野党への信頼である。

以降、

・② 有権者の意識変容 ・③ 政策の柱が無い

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。