経営幹部・エグゼクティブが事業や組織、チームを率いるにあたり、「経営者的思考・行動」が取れる人か否かは、現在の職責が課長・部長・執行役員・取締役のどのレイヤーにあるかに関わらず、大なり小なり基本的に問われることです。

第四回は、「経営者的思考・行動」が取れる幹部採用の成功のために確認すべき3つのポイントについて経営者JP代表取締役社長・CEO井上和幸氏にご寄稿いただきました。

私は、「経営者の仕事」とは①目標の設定、方向付け、②資源調達と分配、③実行の動機付けと進行管理の3つであると総括し各処でお話ししています。

幹部採用においてチェックすべきことは、究極のところ【この3つが、相応のレベルでできるという事実と証拠】だけと言っても過言ではありません。

「①目標の設定、方向付け」の確認の仕方/伝え方

チェックポイント、その1です。応募者の幹部人材は、これまでの職務の中でどのような目標設定を行ってきた人でしょうか。そしてそれをどう達成しようとしてきたでしょうか?

この「その人なりの設定目標」と「具体的な戦略、戦術」について、どのような実績の持ち主かを職務経歴書+面接から確認することが、エグゼクティブ人材採用の第一歩。この部分が、その候補者の経営幹部・エグゼクティブとしての魅力を際立たせます。

その中でも大切なのは「ロジック」と「パッション」。

なるほどと思える、状況や背景、会社の事情などに基づいた目標設定となっていたか。一方で、「なぜ、それをやるのか」についての腹落ちとコミットメントを感じるか。候補者の、その時々の的確な状況判断と血の通った決断・方針の打ち出しを、採用企業側として感じることができているか否か。

一般的に、転職ご相談者の皆さんの職務経歴書を拝見した際に、この「設定目標」が具体的に見えない、そもそも「どのような理由や背景から、何を達成しようとしていたのか」が具体的に理解できないケースがほとんどです。

転職応募者側の皆さんには、ぜひ実際のエントリーの前、面接の前に、しっかりこれまでの取り組みを思い返し、整理して臨まれることをおすすめします。

「②資源調達と分配」の確認の仕方/伝え方

これは、経営職の経験がある方にとっては資金調達や資材調達も意味しますが、ここでの共通事項としては人材面でのことと捉えてください。要するに、その候補者がこれまで、その時々の組織(チーム)をどう作ってきたか、ということです。

必ずしも人事権をもって組織を預かった経験はないかもしれません。しかし、預かったチームをどう差配し、メンバーの役割分担をどうするのかについてはマネジャー以上のポジションであればその候補者の責務であったはず。

できれば自分なりにこだわって人を集めた経験などがあるとよいですね。そこにその候補者のチーム作りにかける想いやテーマ感が必ず表れます。

ここでのポイントは「ストラクチャー」と「ネゴシエーション」。

成し遂げようとしていたこと(会社から要請されたこと)に対して限られたリソースを最適配分しようとしていたか、極力それが実現できていたか。メンバーに対してどのように役割を決めてアサインしてきたか。できれば「おお、なるほど、その体制作り・組織作りは上手いね」と感じたいところです。

転職ご相談者の皆さんの職務経歴書を拝見した際に、案外抜けていることが多いのが、「その時、具体的にどのような組織体制であり、その中のどの部分をあなたは管轄していたのか」「その管轄していた組織・チームはどのような体制であったのか」についての記述です。

更に、「どのような考えで、どのようなフォーメーションを取ったのか」についてまでしっかり言及されているケースはほぼ皆無。これが記述されている、面接時の会話の中で端的に説明されるだけで、その候補者は他の候補者から頭ひとつ抜け出すでしょう。