昨年10月時点の新聞販売部数はさらに落ち、一般紙は2800万部で、この5年間、毎年200万部ずつ落ちてきました。「大学生ら若い世代はほとんど新聞を読まない」、「主に高齢者しか読まなくなっているところに、コロナ死者のほとんどが頼みの高齢者」という惨状です。

販売部数が減れば、広告収入が落ちる。恐らく広告単価のダンピングが激化していると想像します。食品、衣料、医薬品、家電などのばかでかい広告が主流です。記事情報より、広告を読ませるようなビジネスモデルは先細りする。若い人は見向きもしない。分かっていてもやめられない。

特にコロナ以降、全ページを使った大型の解説記事、特集が増えています。ビジュアル化、カラー化、グラフ化などで、見栄えはよくなっています。その反面、中身が薄いし、頼みの高齢者がそんなに長い記事をよむとも思えない。裏目にでている感じです。

合理的な経営をするはずの日経などは、40頁の新聞のうち3分の1も使って、ESG(環境・社会・・ガバナンス)やデジタル関係のシンポジウム、特集などを連発し企業広告を必死にかき集めています。ほどんどの読者は読まず、抜き取って捨てる。新聞の価値の劣化です。

私がブログで何度か批判したところ、コメントが寄せられてきました。「就活や投資で日経を購読している大学生です。広告ページで企業名や企業の取り組みを知ることが多く、参考になります」と。それって本当なの。

「大学生」というのはウソでしょう。日経の関係者あたりが「大学生」を装ってブログを批判したと想像します。企業広告にはそうした意義はあっても、連日、何十ページものESGだの、GXだのを連発することに違和感を覚えてほしいといっているのです。

新聞社は非上場で、経営情報を公開していません。公開していれば、外部の専門家からビジネスモデルについて様々な指摘、提案が寄せられるのにそれがない。「井の中の蛙」のような経営が延々と続く。

メディアの報道のうち、重要なのは政治ニュースです。特に権力側は報道機関の囲い込みを強めています。「権力寄りのメディアには、首相がインタビューなどに応じる」、「親政権寄りのメディアには政治情報、政府の政策情報をリークする」など、露骨です。

首相が新聞、テレビの最高トップと会食することがあります。会食する相手を選別していると思います。取材でもなく、人間関係の維持を目的とした会食にメディア・トップが応じること自体がどうかしている。

外されたメディアは、特ダネ、独材をなかなか入手できない。そこで反権力的な報道、中立的とはいえない報道に傾斜していく。政府権力のメディア囲い込みが取材力を奪う大きな原因になっています。メディアの報道をつまらなくしている要因はここにもあります。

NHKの新会長が決まりました。ますますはっきりしたのは、政権寄りになってくれそうな人物を起用し、NHKの報道に影響力を行使しようとする政治の姿勢の定着です。

「日銀は政府の子会社」(安倍元首相)と思っている自民党議員は少なくないでしょう。その日銀は異次元金融緩和の泥沼から足を抜けず、もがいています。「NHKも政府の子会社」と考えている自民党議員は多い。それを忖度するようになったら報道内容の劣化は、ますます泥沼から足を抜けなくなっていくのです。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。