ウィーンでは9日から13日の5日間で同グループの活動家たち51人が拘束された。集会法と道路交通規則、そして一部は治安警察法に基づいての対応だ。グループによると、過去1週間の活動で約1万ユーロの献金が集まったという。彼らは、「私たちは仕事に行かなければならない人々を妨害したくはない。ただ、文明が危機に瀕していることを理解してほしい。私たちは止められません」と訴えている。

ちなみに、オーストリアのネハンマー連立政権に加わる環境保護政党「緑の党」のヴェルナー・コグラー党首(副首相)とレオノーレ・ゲウェスラー環境相は「最後の世代」の活動目標には共感を持つ一方、抗議のやり方には懸念を有している。

独週刊誌シュピーゲル最新号(1月7日号)はドイツの「最後の世代」創設者の1人、ヘンニック・イェシュケ氏(22)とインタビューしていた。見出しは「われわれは今、政治的危機を生み出さなければならない」。イェシュケ氏は、「政府は環境保護を明記している憲法(ドイツの場合基本法)に違反している」と指摘、「平和的な革命を行うことが願いだ」という。

ただし、ドイツでは昨年クリスマスの時、環境保護活動家たちは不法な犯罪行為の疑いで家宅捜査を受けている。同氏によると、ドイツの「最後の世代」は50カ所の拠点を有している。ベルリンで過去、500人が警察によって一時拘束されたし、2000人弱のメンバーが不法活動をしたとして訴えられている。同氏は、「自分のような完全な献身的活動家は約80人だ」という。

ここ数年、コロナ・パンデミック、そしてウクライナ戦争と大きな問題が生じ、環境保護運動がその陰に隠れてしまった感があった。グレタさんの「フライデーズ・フォー・フューチャー」では2019年9月、100万人以上が路上で抗議デモをした。それを受け、世界各国で環境保護協定などが施行されてきた。ただ、エジプトのシャルム・エル・シェイクで昨年11月6日から開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)をみても分かるように、関係国間の利害の対立があって環境保護の進展は遅々たるものだ。それを見て「これでは何も改善されない」という危機感が環境保護グループの間に生まれ、「最後の世代」のようなメディア受けする過激な行動を展開するグループが出てきたのだろう。ただ、道路封鎖や美術館の絵画にペンキをまき散らす行動に対しては大多数の人々は批判的だ。 。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。