シネマ議員は離党を突然に発表した12月9日、その理由として以下の骨子を述べた。

民主、共和両党とも過激派が自分に反対する側を悪魔化してののしり、二大政党制は瓦解した。この状況では私はアリゾナ州の選挙民の期待に沿えない。無所属の独立議員として活動するほかない。

その背景にはとくに民主党側のリベラル左派活動家たちが首都ワシントンでもアリゾナ州でもシネマ議員への攻撃を激化させているという実態がある。

上院ではこの結果、中間選挙で得た51議席の1議席を減らしたことになるが、半数の50議席でも票決では上院議長を務めるカマラ・ハリス副大統領の1票を加えられるため、多数派の優位は保てることとなる。

上院の民主党院内総務チャック・シューマー議員も「シネマ議員は現行の民主党主導の委員会職務を続けると述べているため、大きな変化はない」と言明した。実際にシネマ議員もこれまで所属していた拘束力のない民主党議員会派から離脱する動きはとっていない。

だがこれまでシネマ議員は民主党所属でもバイデン政権が最も熱心に進めたインフレ削減法案の当初の巨額支出に正面から反対し、修正を余儀なくさせた抵抗の実績があり、新議会では無所属としてその種の動きをより果敢にすることも予想される。民主党側にとっては下院での共和党攻勢と合わせて上院での懸念の原因ともなりかねないわけだ。

古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。