水上バイクでレスキュー

カヌーに乗せてもらった1~2分後には、水上バイクが救助にきてくれたので、乗り換えて港に連れていってもらいました。レスキューの方からは「気持ち悪くないか?」「寒くないか?」と体調を心配する声をかけてもらって、最初は水上バイクの後ろに付いているウェイクボード(ライフスレッド)につかまるよう言われたんです。でも、海水を飲んで気持ちが悪かったので、水上バイクの後部座席に座らせてもらいました。フローティングベストを着た状態でホールドされると、けっこうきつかったので。

港に着いてホッとした?

いや……。最初に思ったのは、「迷惑をかけてしまった」でしたね。すごくたくさんの人が動いてくれていたので、「これで助かった」という気持ちはなかったです。命の危険を感じるピークは過ぎていたというか。

ピークが過ぎたとは?

少し沖に出たときに朝日が見えたんですね。そのとき、「きれいだな」「生きているな」と思って。身の危険を感じたのは落ちた瞬間が一番で、それを乗り越えて沖で浮いていたときは、だいぶ落ち着いていたんだと思います。

「落水からの生還」生存者が語る【釣り落水事故の恐怖】 生死分けたのはライフジャケットレスキューに引き継がれ事なきを得た(撮影:TSURINEWS編集部)

自身で考える事故の原因は何?

まずは知識不足ですね。とくに場所に対する知識がまったく足りていなかった。それから、周りを見たときに誰もライフジャケットを着ていなかったので、「ここは危ないところじゃないんだ」という先入観もあったと思います。

無事に戻れた要因は?

やはりライフジャケットですね。あれがなかったら、たぶん浮いてられなかったし、浮いてられなければ冷静でいられなかったと思います。沖に泳いでいるときは、行きたいところ行けず邪魔に感じるんですが、力を抜けば浮いていられるのは、やっぱり楽。体力も温存できますし。

「落水からの生還」生存者が語る【釣り落水事故の恐怖】 生死分けたのはライフジャケット湘南海上保安署・相澤氏と当日を振り返るS氏(撮影:TSURINEWS編集部)

事故後に釣りは再開されましたか?

まだ一人で行く気にはなれず、いまは友達に連れて行ってもらっています。それで行ったら、釣れるからといって危ない場所には立ち入らないよう徹底しています。

ほかに変わったことは?

桜マーク付きの膨張式ライフジャケットを購入し、釣り場が小河川であっても必ず着用するようにしています。このへんの意識は大きく変わりましたね。

釣り人に伝えたいことはありますか?

まず無理をしないことですね。それから、台風が遠くにあったとしても、楽観しないこと。あのときも台風がかなり沖にあって、大潮が重なっていたと思うんですね。そういうことも事前にしっかりリサーチして、現場に着いて波が高ければ、周りに釣り人がいても無理は絶対にしない。場所を変えるなり、日をあらためてほしい。事前のリサーチも、釣りの楽しみのひとつにしてもらえればいいのかなと思います。

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