落水した状況は?

当日は腰下ぐらいのウェーダーを着ていたのですが、釣り場へ向かう途中で中に海水が入ってきたので、高いところに避難しようとしたんです。ただ、そこが海に近いところで……。段差の間にある波の通り道を越え、もう一段高いところの行こうとしたときに波を正面から受けてしまいました。「ヤバい」と思って両手で岩をつかんで耐えたのですが、そこは後ろから波が回り込んでくる場所で、その波を受けて海に落ちました。

「落水からの生還」生存者が語る【釣り落水事故の恐怖】 生死分けたのはライフジャケット海況によっては波で洗われる磯場へ降りる階段(撮影:TSURINEWS編集部)

落水直後の状況は?

最初は波にのまれて、上下左右がわからない状態だったんですが、ライフジャケットが浮いていく方向が明るかったので、手を伸ばしてみたら感触が水の中とは違って、そっちのほうへ懸命に上がろうとしました。

ライフジャケットの浮力に助けられた?

はい。それで海面に浮上してからは、まずマスクを外して、周りを見たら電話をしている人を確認したのですが、もう一度波にも洗われてしまって……。そのときに、ウェーダーを脱ぎ始めました。水が入って、もがくこともできなかったので。

ウェーダー脱いだ後の行動は?

「このままここにいたら助からない」と思ったので、波が落ち着いているところに行ったほうがいいと考え、少し沖に泳いで出ました。沖のほうに漁船がいるのも見えていたので、その人たちに拾ってもらえるかなと。ただ、もう通報してくれているのがわかっていたので、自力で漁船まで泳いで助けを求めようとしたわけではなく、「30分?1時間くらいしのげば何とか助かるかな」と思って沖へ出ました。水温もそれほど低くなかったので、たぶん大丈夫だろうと。

「落水からの生還」生存者が語る【釣り落水事故の恐怖】 生死分けたのはライフジャケット落水後は比較的波が落ち着いている沖へ退避したという(撮影:TSURINEWS編集部)

近くのカヌーが助けてくれた?

はい。周りの人が要請してくれてみたいです。でも、カヌーが視界に入ったときは、なぜかわかりませんが、「これで助かった」と思えず、寄ってきてくれたときに「助かったんだな」と少し安堵しました。カヌーがきてくれる前も、漁船が近くを通って、声を出したり水を叩いたりしたものの反応がなかったので、もしかしたらまた通りすぎちゃうのかなと。

カヌーの乗艇者とのやりとりは?

カヌーのアウトリガー部分につかまって、そのあと中に引き上げてくれました。そこで水分補給もさせてもらって。助けてもらったあと、「大丈夫か?」とか声もかけてもらったんですが、そのへんはよく覚えてないです。たぶん安心して耳に入らなかったんだと思います。