海洋性蓄積毒のリスク
このような海洋性蓄積毒に関するもので、魚好きならばぜひ知っておくべき裁判(判決)があります。それは1999年に千葉で発生した「シガテラ毒」による食中毒事故の被害者が起こしたもの。この裁判では、原因となったイシガキダイを提供した料亭が提訴され、損害賠償を払えという判決が出ました。
多くの釣り人や漁師にとって、シガテラ毒は過去の傾向から「南西諸島で発生するもの」というイメージが強くなっています。実際に、日本本土、特に本州以北で発生した例は非常に少ないです。またイシガキダイという魚は、近縁のイシダイに並ぶ美味な高級魚として知られており、そんなイシガキダイによるシガテラ食中毒が、南西諸島ならともかく本州で発生するイメージは、正直ないと言っていいでしょう。
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それでも裁判所は「南西諸島においてイシガキダイによるシガテラ発生例は少なからずあること」を根拠に、千葉県産イシガキダイの毒性を予見できなかった料亭側に責任があると断じたのです。これはすなわち、「地域を問わず」中毒事故の発生例がある魚を提供した場合、罪に問われてしまう可能性があるということになるでしょう。
上記のハコフグやイシガキダイをはじめ、限られた地域での食中毒例がありながら、全国で食用とされているものは少なくありません。これらの魚を他者に提供した場合、上記の通り訴訟のリスクがあることはもちろん、集団食中毒事故につながってしまう可能性も残念ながらあります。
他人に魚を売ったり提供したりする場合、このような「海洋性蓄積毒」のリスクも考えないといけない時代が来てしまっているのです。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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