では日本。今年一年を占うと言ってもよいのが1月17-18日に開催される日銀の金融政策決定会合です。前回の会合で黒田総裁はイールドカーブの変動幅を0.25%から0.50%に拡大しました。ところが10年物国債利回りはその上限あたりで貼り付く催促相場になっているため、個人的には黒田総裁がこの幅を0.75%か1.00%ぐらいまで広げるのではないかとみています。これは日銀が市場原理を無視した金融支配をしているという批判をかわすこと、黒田総裁の任期がもう数か月しかないため、バトンタッチするために自ら作り上げた堅牢な政策の抜け道を自らの責任で作るためです。

仮に私の予想が当たった場合、メガバンクや生保の株価は更に暴騰するはずです。一方、メディアはネガトーンなニュースのオンパレードになるでしょう。街角インタビューでは批判と非難の嵐となります。ただ、80%のネガティブな街の声は最終的にほとんど意味をなさず、20%の勇気が日本の殻を打ち破る道筋を作ると思います。

残念ながら日本は物価上昇に対して極めてセンシティブです。しかし、2022年一年を通じて企業は戦々恐々としながらも「ライバルが値上げするなら俺も…」という機運が出てきたのです。かつては「ライバルが上げるなら俺は我慢して市場を制覇する」だったはずです。それが出来ないというのは企業レベルではもはや余力がなく、我慢比べだということです。

では日銀のイールドカーブコントロール(YCC)の変動幅緩和と何が関係あるのか、と言えばズバリ、日銀はほぼ無意味な大規模金融緩和をやり続けたということです。私は6-7年前に「金利は一定以上に下がってもその下がった恩恵の効果が出にくくなる」と申し上げたことがあります。一定とは感覚的には1.0%以下です。つまり、ほとんど経済浮揚効果がない深掘り状態から通常体制に戻ることで日銀の本来の機能を回復させ、ひいては日本経済を集中治療室から出し、せめて6人部屋で入院するぐらいまで回復させることなのです。

日本の物価上昇は企業が我慢した分、北米と比べ1年以上遅延した形で現れます。今年の春も値上げラッシュと報じられているのはそのためです。企業が値上げすれば日銀が我慢のYCCをするつじつまは全く合わなくなるわけです。

そういう意味での日本経済の正常化への道は結果としてありがたいのですが、企業の淘汰の嵐も吹き荒れると思います。今年は相当数の倒産と事業閉鎖が起こるだろうとみています。それは不況ではなく、正常化へのリハビリなのだと割り切れるかどうかではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月12日の記事より転載させていただきました。