イスラム聖職者支配体制に抗議するデモがイラン全土で広がる一方、イラン当局はデモ参加者を拘束し、極刑の死刑判決を下すなどで強権を行使している。イランには「革命裁判所」と通常の裁判所があるが、前者は神に反する言動、公共秩序の破壊行為を扱う裁判所だ。抗議デモ参加者は前者の裁判所で判決を受ける。被告人弁護士の不在の場合もある。被告者は控訴できるが、昨年9月中旬から始まった抗議デモでこれまで4人の抗議デモ参加者が処刑されている。

IRGCのホセイン・サラミ最高司令官(IRNA通信、2023年1月10日)
イランからの情報によると、今年1月7日、新たに2人の男性が処刑された。2人は昨年11月の反体制抗議行動中に治安部隊メンバーの死亡の責任があるとして告発されていた。イランでは昨年12月、2人のデモ参加者が処刑され、国際的な怒りを引き起こしたばかりだ。
国際社会の抗議にもかかわらず、イラン司法は新たに3人のデモ参加者に死刑判決を下した。司法当局のニュースサイト「ミザン・オンライン」が10日報じたところによると、1人のデモ参加者は同国北部の港湾都市Noshahrで有罪判決を受けた。イスラムの法的見解によると、この参加者は「神に対する戦争」(モハレべ)と「地上での腐敗」の罪で起訴された。
人権団体アムネスティ・インターナショナルの情報によると、イランでは少なくとも26人のデモ参加者が死刑に直面している。イランの首都テヘランで10日、抗議デモ参加者への死刑執行に多くの人々が抗議している。
そのほか、「ミザン・オンライン」によると、イランで開発支援機関の労働者、41歳のベルギー人のオリヴィエ・ヴァンデカスティール氏は、「外国の諜報機関の利益のためにイラン・イスラム共和国に対するスパイ活動」の罪で合計40年の懲役判決と74回のむち打ちを宣告された。また、新聞「Schargh」によると、1人のスポーツジャーナリストは18年の懲役を言い渡されている。同ジャーナリストは、抗議活動を取材した後、昨年10月下旬に逮捕された。彼は国営スポーツ紙「イラン・ワルセスキ」で働いていた。ニューヨークのジャーナリスト保護委員会(CPJ)によると、イランの抗議デモ関連で既に80人以上のメディア関係者が逮捕されているという。
イラン当局への抗議デモはイランのクルド系女性マーサー・アミニさん(22歳)が昨年9月13日、テヘランでスカーフをイスラムの服装規定に基づいて着用していなかったとして風紀警察によって拘束され、刑務所で尋問を受けた後、意識不明に陥り、同月16日、病院で死去したことが報じられたことが発端で、イラン全土で女性の権利などを要求して広がってきた。それに対し、治安部隊が動員され、強権でデモ参加者を鎮圧してきた。抗議デモは今月16日で4カ月目を迎える。
米国に本拠を置く組織、人権活動家通信社(HRANA)によると、70人の未成年者と約70人の警察と治安部隊を含む500人以上が抗議デモで死亡し、1万9000人以上のデモ参加者が逮捕されている。