ブラジルでボルソナロ前大統領の支持派がブラジルの議会を襲撃しました。ルナ現政権に対する対立姿勢と選挙の不正を訴えるものでした。構図としてはトランプ氏の関与が指摘されるアメリカの議会襲撃事件とほぼ同じと言ってよいでしょう。ボルソナロ前大統領は事件当時、アメリカのフロリダににいたので、直接的な関与はないものと思われます。トランプ氏については係争が続いており、間もなくその判断が下されると思われますが、個人的にはトランプ氏が扇動をしたというより、トランプ氏が扇動されたように感じます。

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両ケースとも指導者は圧倒的支持をする民衆に持ち上げられ、民衆の主義主張を聞くだけでなく、それらの声を政治に反映させてくれたヒーローという位置づけかと思います。
LGBTQを尊重する時代は着実に進んできています。しかし、20年前はまだまだで、彼らの声は切実なものでした。異端児扱いされ、肩身の狭い生活を強いられました。あるいは真の自分を隠したり、社会的地位を確保するために偽装結婚するケースもありました。彼らは立ち上がり、市民権を少しずつ得てきています。LGBTQは時間をかけながらも着実な変化がみられる一方、議会襲撃派は力づくで急激な変化を試みています。
議会襲撃事件においてアメリカとブラジルで共通するのは強硬な右派、銃に極めて肯定的、比較的低教育レベルで従事する職業も農業など比較的抑圧された日々を送っている人たちです。トランプ氏は光が当たらないそのような人たちを前面に押し出すことで勝利をつかみました。
このような社会の反乱は地球上どこでも起きています。例えばタイはタクシン氏やインラック氏の農民や低所得者層へのバラマキ政権でしたがそれに強い反対意識を持つ既得権益者、エスタブリッシュ層が不満を持っていたことが二分化した背景です。また、韓国のように国民全体が常に政権に不満を訴え、文句を言い続け、安定政権の運営ができない国家もあります。
では国民が声を上げ、現政権を倒したことで国家の再建がうまくいくかと言えばそんな例はまずありません。アラブの春で北アフリカ諸国が次々と政権転覆をしましたが、結局、ほとんど再建できた国家はありません。理由は国民には文句を言うターゲットが必要であり、政権を倒すことが第一義であり、どんな国にしたいのか、民主主義は何で、どう国家運営したのか、という確固たるビジョンなどほぼないからです。というより、100人いたら10も20ものビジョンが出来て、それぞれが好き勝手な主張を繰り返すことで国家の運営がまともにできなくなるのです。
イスラエルやイタリアの政権運営は連立与党でその連立の組み方次第で政権がどんどん変わる不安定国家です。つまり、国家における多党化が進んでいるのです。これは民主主義国家であればナチュラルな流れです。日本でも野党はゆっくりですが、多党化が進み始めています。
アメリカは二大政党と言いますが、個人的にはもう民主、共和党共に政党内部で多党化している状態だと考えています。民主党内の分裂は酷いのですが、共和党も先日の下院議長決定プロセスでみせた党内分裂が極めて深刻なレベルに達していることを露呈しました。日本では自民党内で派閥政治と言われる一種の多党化が進んでいます。