などを聞かれます。

さらに詳しい設問もあり、脱炭素に向けた施策として、

省エネ活動(プロセス改善) 省エネ活動(機器更新) 電力契約の見直し 再エネ導入 グリーン電力証書、Jクレジット、非化石証書などの購入 燃料転換 カーボンプライシングの導入 EV等エコカーの導入

といった選択肢が並んでおり、それぞれに対して「実施済み、検討中、予定なし」などの三択で回答を求められます。当然ながらたくさんチェックを入れた方が高得点につながります。

こうした設問が1社当たりで数十~百問近くあり、年間で数十社から調査を受けるサプライヤーもあります。一般的にサプライチェーンの上流になるほど会社の規模や人員が小さくなる中で、サプライヤー各社は大変に煩瑣な回答作業を強いられています。

サプライヤーが上場している場合は、ほぼ同じ内容で毎年金融機関から送られてくるESG投資の調査表にも多大な手間と時間をかけて回答しています。以前から来ていた金融機関からのESG調査に加えて、顧客企業からの脱炭素調査も加わっているのです。日本の産業界全体でどれほどの生産性が損なわれているのか想像もできません。

サプライチェーン川下の大手企業が脱炭素をめざすのは各社の自由です。一方で、サプライヤーにまで2050年脱炭素や2030年CO2半減を求めることが、企業倫理の観点で正しい行為と言えるでしょうか。

本質的には、川下大企業自身のサプライチェーン(スコープ3)が脱炭素になればよいはずです。自社が提供を受けている部品や原材料の脱炭素をめざすことと、各サプライヤーに対して事業活動全体の脱炭素を要求することは全く別次元の話です。

仮にサプライヤーにおける自社の売上比率が1%であれば事業活動全体の脱炭素を求めるのは過剰要求ではないでしょうか。過剰要求とならないのは、売上の80%などビジネスの大半を自社に依存しているサプライヤーに限られるでしょう。

この背景には川下大企業が取引減をチラつかせながらサプライヤーに対して脱炭素を迫るという構図が存在しますが、各社の行動指針で宣言している「優越的地位の濫用」にあたらないのでしょうか。公正取引委員会が所管するいわば狭義の優越的地位濫用では、物品・サービスの購入を強要したり、金品や役務、取引金額の減額等を直接要求した場合に限定されているので、脱炭素要請は白(または白に近いグレー)なのかもしれません。

一方で、サプライヤーが脱炭素をめざすためには、前述のアンケートが示す通り「省エネ活動(プロセス改善)」「省エネ活動(機器更新)」「電力契約の見直し」「再エネ導入」「グリーン電力証書、Jクレジット、非化石証書などの購入」「燃料転換」「カーボンプライシングの導入」「EV等エコカーの導入」など莫大なリソースを投入することになります。

当然ながらコストアップを伴いますが最大のメリットが受注の現状維持なのです。コストアップ分の価格転嫁を認めない場合はサプライヤーに対して不利益を与えてしまいます。これは広義の優越的地位濫用と言えなくもありません。

サプライヤーに対する脱炭素要請が自社の行動指針で宣言している「公正な取引」の精神に反していないか、サステナビリティ部門の担当者は虚心坦懐に考えてみてはいかがでしょうか。

長くなったので、「人権」については次回に述べていきます。

注1)行動憲章、CSR規範、サステナビリティポリシー、コードオブコンダクト、ESG憲章、など名称は各社各様。

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