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サプライヤーへの脱炭素要請は優越的地位の濫用にあたらないか?
企業の脱炭素に向けた取り組みが、自社の企業行動指針に反する可能性があります。2回に分けて述べます。
2050年脱炭素や2030年CO2半減を宣言する日本企業が増えています。2022年2月のアゴラ記事で指摘した通り、この40年間省エネ活動を進めてきた日本企業がたったの7年で事業活動におけるCO2排出量を半減させる方策は太陽光発電とカーボンオフセットのふたつしか残されていません。
一方で、2000年前後から多くの日本企業が行動指針注1)を策定・公表し随時改訂・更新しています。この行動指針には、「公正な取引」「人権」「法令順守」「腐敗防止」「環境保全」「労働安全衛生」などが謳われています。
企業の脱炭素宣言や太陽光発電の導入は言うまでもなく行動指針における「環境保 全」に資する取り組みなのですが、一方で「公正な取引」と「人権」に反する可能性があります。「公正な取引」としてはサプライヤーへの優越的地位の濫用、「人権」では強制労働への加担です。本稿では、優越的地位の濫用について述べます。
2023年1月現在、日本の産業界ではサプライチェーンの下流から上流に向けて脱炭素要請の大波が押し寄せています。要請とは言ってもいきなり立ち入りや現地確認になることは稀で、まずはアンケート調査を受けることになります。
具体的には、
自社のCO2排出量を把握していますか 把握している場合はスコープ1、2、3それぞれ数値を記入してください CO2削減の年間目標はありますか (2030年などの)中期目標はありますか 2050年脱炭素の長期目標はありますか