●まとめ 「売りたいものを売る」という姿勢

 今回の調査は、オープンから約1カ月が経過してからの訪問となった。日曜の朝、開店前に店舗を訪ねると、約30人の行列ができていた。開店から1カ月後ということを考えるとやや並びが少ないように感じたが、開店してから5分後には“生鮮ゾーン”はお客であふれ、いつものロピアの光景になった。

 バロー(岐阜県)の撤退跡への居抜き出店となった可児店。周辺は住宅街であるものの、スーパーマーケットの商圏という観点から考えると人口はやや少ないとみられる。それでも店内はお客でにぎわっており、ロピアの集客力の強さを改めて思い知らされた。

常識や慣習にとらわれない! ロピア可児店の売場から感じた「売りたいものを売る」という姿勢
調査期間中はオープンから1カ月経ったことを記念して、店で使えるお買い物が付いたオリジナル保冷バッグを税込1000円で販売していた(画像=『DCSオンライン』より 引用)

 2022年10月に開業した「三田対中店」(兵庫県三田市)の売場レポートでも解説しているが、この可児店でも、一般的なスーパーマーケットでは考えられない売場づくりに取り組んでいる点に注目だ。

 スーパーマーケットに携わる人の多くは、「売れ筋」と「死に筋」という考えが染み付いてしまっていることだろう。だが、こうした考えはロピアにおいてはあまり重要ではないようだ。ロピアの店舗を見ていると、売れ筋商品を扱っていない売場も多く、扱っていたとしても一般的に視認性が悪いとされる棚の最上段に陳列しているのが目を引く。たとえば、加工食品の調味料コーナーでは、売れ筋の「Mizkan・味ぽん600mℓ」を最上段に配置し、グループ企業の丸越醸造の商品をメーンに扱っている。

 本連載で幾度となく述べているが、こうした試みから感じられるのは、ロピアの「自分たちが売りたい商品を売る」という姿勢だ。現在は多くのチェーンがメーカーや問屋の“しがらみ”に縛られ、自らの発想による売場づくりができないでいる。

 おそらく、スーパーマーケットやメーカーの関係者のほとんどは、こうしたロピアの試みを「ネガティブ」に捉えることだろう。だが、ロピアの売場を見ていると、われわれスーパーマーケット業界の人間は「売れ筋」「死に筋」という呪縛にとらわれているのではないかとすら思う。ロピアの現場担当者の創造力にはいつも驚かされる。

(店舗概要)
所在地 岐阜県可児市今渡840-2
開店日 2022年10月18日
売場面積 売場:約520坪、袋詰場所・事務所:約40坪(ともに歩測)
営業時間 9:30~19:00
駐車台数 517台

提供元・DCSオンライン

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