イタリアのお洒落オヤジには大抵、着こなしに関してのこだわりや、ファッションについての蘊蓄があるもの。着こなしについて語らせれば必ず誰しも一家言があり、それが酒のつまみにもなってしまうほどです。
「イタリアのリッチなオジサンの今」をチェックするこのシリーズでは、そんな蘊蓄とこだわりを伺うべく、コローニ伝統工芸財団のゼネラルディレクター、およびミケランジェロ財団のエグゼクティブディレクターを務めるアルベルト・カヴァッリ氏にインタビュー。職人技の素晴らしさを広め、その存続を助けることを目的とした文化財団のトップ故に、仕立てやハンドメイドの話に終始するかと思いきや、実はファッションジャーナリスト、イタリアのハイブランドのPRとして活躍した経験もあるカヴァッリ氏、“ためになるこだわりと蘊蓄”の使い方を語ってくれました。

「ずっと同じスタイル。でも自分らしいストーリーを演出するものを必ず合わせます」

人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る
(画像=『J PRIME』より引用)
人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る
(画像=『J PRIME』より引用)
人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る
(画像=『J PRIME』より引用)

「私のスタイルはずっと同じですよ。長く着られるものが好きなので、あえてトレンドの物は着ないようにしています。私の場合は職人技が生きたものを選ぶようにしていますが、一番大事なのは自分らしさを出せるアイテムであること。『エレガント』という言葉は、選ぶという意味のラテン語『エリーゴ』から来ていて、エレガントであるために大事なことは、アイテムを正しく選ぶことなのです。サイズは自分にフィットしているかどうか、ナチュラルに着こなせているかどうかも含めて、ね」

今日のコーディネートは、彼の服の大半を占めるというネイビー系。全身柄モノではありますが、トーンスタイルなので収まりよくまとまっています。首を出すのが嫌いで夏でも巻物をするというカヴァッリ氏は、今日もタートルネックのニットにストールを合わせました。いつも同じようなスタイルだからこそ、巻物に遊びを入れたり、裏地が大胆なコートを選ぶなど、どこかに特別感を入れるようにしているとか。時計はポエティックなデザインが印象的なヴァン クリーフ&アーペルの「palais de la chance」を合わせています。

「日本社会では他人とあまりにも違う恰好はしにくいのかもしれません。でも、だからこそどこかで自分らしさを強調することをお薦めします。それは小物でも、色でも素材でも何でもいい。いつもそれを使うことで自分らしいストーリーを演出するのです」

「自分らしい何かを着こなしの中に入れると、話のきっかけを作ってくれることも」

人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る
(画像=『J PRIME』より引用)
人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る
(画像=『J PRIME』より引用)
人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る
(画像=『J PRIME』より引用)

もう一つのコーディネートも、エトロのコートとブルネロ クチネリのパーカ、そしてトラサルディのコーデュロイパンツという、カヴァッリ氏の鉄板色であるネイビーを中心に構成し、足元は長年愛用しているプラダで。そこにルイ・ヴィトンの大柄の巻物を合わせました。そしてラペルの部分にはブートニエール的にヴィンテージのブローチを飾っています。

「このコーディネートもそれ自体はシンプルで、もう一つのコーディネートとさほど変わり映えはしないかもしれません。ただ、ここでもボリューミーな巻物で存在感を与えたり、白の大きなブローチを付けて胸元に視線が行くように計算しています。人と会うとき、着こなしの中のちょっとした物がきっかけで会話が始まることはよくあるものです。私はシャイなので、ブローチや巻物の話を振られることが自分のことを話すための助けになってくれているのです」

確かに人が集まる場では、ファッションが話のきっかけになることも多いもの。そしてそこでちょっと蘊蓄を発揮して、そこから話が広がるようがあるアイテムなら、意外と人脈作りにも繋がるのかもしれません。