中国が12月7日、「ゼロコロナ」政策を撤回して以来、従来のコロナ規制をほとんど解除し、海外からの帰国者に対しても検疫要件の終了を決めた。それ以来、中国で新規感染者が急増、死者は増え、火葬場はフル回転。同時に、中国国民にとって一年で最も重要な祝祭日の春節(旧正月)の前後(1月21日~27日)を控え、海外で過ごす国民が増えることが予想されている。

中国観光客が殺到するスイスの観光地ルツェルン(スイス・インフォから)
一方、欧州では、コロナ・パンデミックから3年が過ぎ、「コロナ・ウイルスは収束した」という声がウイルス学者の間から出てきた。ドイツの著名なウイルス学者クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)は「コロナ・パンデミックは終わり、通常の風土病となる」と語ったばかりだ。
「これでコロナ感染前の日常生活を取り戻せる」と思った欧州国民が多かったはずだ。その矢先、多数の中国旅行者が欧州を目指して飛んでくるというニュースが入ってきた。新規感染者が急増し、死者も増えている、という北京からのニュースを受け、欧州諸国は戸惑った。3年前の状況に似ているのだ。
欧州は2020年上旬、中国共産党政権がコロナ・ウイルス感染の初期データを公表せず、ウイルスの発生源問題も隠ぺい、その結果、コロナ・パンデミックの最初の被害地域となった。欧州でも最初の犠牲地はイタリア北部ロンバルディア地域、特に、小都市ベルガモだった。病院には不気味な呼吸器系疾患を訴える市民が次々と運び込まれ、患者で溢れ、市の火葬場には霊柩車が列を作る。軍トラックが出動して遺体を他の地域に輸送する事態となった。市官製メディアは死者名リストで一杯となった。医者はどの患者を優先して治療し、どの患者を見捨てるかで、生死を決定しなければならないトリアージに追い込まれた。悪夢の日々だった。
イタリア政府の反応は“それ故に”早かった。同国のメローニ政府は中国からの渡航者に対し、抗原検査の陰性証明書の提示義務を決定するとともに、ブリュッセルに対し「欧州連合(EU)の共通の規制措置を取るべきだ」と要求した。フランス、スぺイン、米国、カナダなどが昨年末、中国からの旅行者にコロナ・ウイルス検査を義務付ける予防措置を導入したのだ。
北アフリカのモロッコの外務省は12月31日、新型コロナ・ウイルスの感染対策のため中国からの渡航者の入国を1月3日から禁止すると発表した。同国外務省は「国籍に関係なく中国から出発する旅行者はモロッコへの入国を許可されない」と指摘。入国禁止の理由として「Covid-19に関連した中国の健康状況の動向」を挙げている。
2023年1月1日からEU理事会議長国に就任したスウェーデン政府は、「4日に統合政治危機対応(IPCR)メカニズムの会議を招集する」と発表した。同国政府によると「中国からの感染拡散を防ぐために欧州レベルで入国制限の可能性を視野に入れた統一戦略を検討する。必要な措置を迅速に導入することが重要だ」という。