仮に、一回目の投票でマッカーシー氏が下院議長に投票されず、何回も投票が繰り返されることになれば、マッカーシー氏にとっては屈辱的な展開となり、自らの党内をまとめる力に大きな疑問符をつける。そのような事態を避けたいマッカーシー氏は委員会のポストなどをチラつかせ、反対派議員の懐柔を図ろうとしているだろうが、それが成功しても、しなくてもトランプ派議員が影響力をこれから引き続き行使していくことは確実だ。

そして、その影響力は共和党によるバイデン政権への追求を強める効果を生むであろう。下院共和党は、バイデン氏の息子ハンター・バイデン氏の調査を表明している。下院共和党の強硬派は息子の汚職疑惑、アフガン撤退の責任などと連座して、バイデン大統領の弾劾を求めており、調査の進展次第では新議長マッカーシー氏に対する弾劾開始の圧力が強くなる可能性もある。

また、直近ではトランプ派議員たちの間から国境警備を担当する国土安全保障省のマヨルカス長官の弾劾を求める声を上がっている。昨年、米国とメキシコの国境には2021年度の数字を超える200万人以上の移民が終結し、共和党はバイデン大統領並びに、マヨルカス長官の不作為を批判している。弾劾を求める議員の中には穏健派の議員も混じっており、マッカーシー氏も国境近くに赴いてマヨルカス長官の辞任を求めた。

強硬な国境管理政策は党内のトランプ派、非トランプ派問わずに支持を得られる政策である。そのため、党内融和も兼ねてマッカーシー氏が音頭を取り、トランプ派議員が求めるバイデン大統領やガーランド司法長官、FBI、ファウチ博士などの追求の前に、マヨルカス長官の処遇をめぐってバイデン政権に圧力をかけていくのが無難であろう。

この2年間共和党は、バイデン政権を追求する手段に欠いていたが、今年度からは今までの鬱憤を晴らすかのような「逆襲」に身を投じるはずだ。

対決姿勢を強める下院共和党

バイデン政権の閣僚に対する追求とは別に、ウクライナ支援、債務上限の引き上げなど様々な問題をめぐり、過激化した下院共和党を筆頭に対決姿勢が強まっていくであろう。

レームダック化するバイデン政権を共和党が徹底的に攻撃する構図は、アメリカの統治能力の欠如を全世界にさらけ出し、過激化する二大政党の対立はアメリカの内向き化を促進する。同時に、それは米国の国際社会で指導力を発揮する力を削ぎ、既に混迷する世界をさらなる混沌にいざなうのだろうか。