レームダック化するバイデン政権
2023年はバイデン大統領にとっては発足以来、最も苦しい年となるであろう。
前年の中間選挙でバイデン民主党は辛うじて上院では多数を維持して、閣僚や最高裁判事を任命する人事権は死守した恰好となった。しかし、下院は共和党に奪還されて、上下両院ではねじれ議会となったことで、民主党が望む予算や法案が容易に実現することが困難な状況となった。
昨年までの二年間、民主党は上下両院、そして大統領府を支配下に収めるトリプルブルーの状態にあったがそれでも議会で物事を推し進めることは簡単ではなかった。
上院では特有の制度である議事妨害が原因で、上院で民主党が多数を誇っていて、下院で法案が可決されても、少数派の共和党に肝いりの法案を全てブロックされていた。そのため、民主党は議事妨害を回避し、上院の単独過半数で法案をごり押しする財政調整措置を駆使し、アメリカ救済法やインフレ対策法などの大規模な財政出動を可能とし、支持基盤に受ける政策を実現する羽目になった。
だが、下院を奪われたことで、民主党は上院に党派性が強い法案を送れなくなり、財政調整措置を用いた法案立案ができなくなった。対中国や対ロシアなどを主眼に置いた、超党派の合意が取れる法案はいくつか採択されるであろうが、リベラル性が強い、莫大な予算を要する法案や予算案が第118議会で通る可能性はゼロに等しい。
ここまでバイデン政権の議会運営自体は早くはなかったが、ねじれ議会となったことでこれまで以上の「停滞」感が感じられ、米国内政の機能不全が指摘される機会が増えるであろう。

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「停滞感」に加え、2023年のアメリカ議会を彩るであろうは一部過激化した共和党のバイデン政権に対する「逆襲」である。
前年の予備選を通して、トランプ前大統領は予備選に介入し、自説に同調する候補を大量に擁立し、推薦した。その結果、本選ではトランプ氏の負の影響もあり、共和党は取れるはずだった票を大きく減らし、共和党は下院では多数を獲得したものの敗北感がなぜか拭えない結果となった。
だが、予備選を通じて共和党内で穏健派が排除され、本選によって極小の多数派が形成されたことで、トランプ氏とシンパシーを覚える下院議員の力が相対的に強まった。
ペロシ下院議長の公認を決める選挙選でそれは如実に示されている。アリゾナ州選出のビッグス下院議員を含め、トランプ派の下院議員は新議長への就任が有力視されているマッカーシー氏への投票を拒否する意向を示している。既に、これらの議員は共和党内の議長候補を決める投票でマッカーシー氏に反対票を投じており、1月3日に予定されている下院議長選が一回目の投票で決まらない公算が高くなっている。そうなれば、それは1923年以来100年ぶりの出来事となる。