そもそも党や政権の方針自体が憲法違反なのだから、山際大臣は辞める必要はなかった。それは葉梨、寺田、秋葉各議員の問題とは性格が異なる。その伝でゆけば杉田水脈議員の政務官更迭も、「岸田に事の軽重を整理し、先を見越して戦略を立てる能力や、法や物事の道理に即した説明能力が欠けている」ことの現れであり、この先、この顰に倣って更迭者を出さざるを得なくなることを懸念する。

杉田議員の政務官更迭は、就任はるか前の私人としての発言や記述が問題視されてのものだ。が、強固な保守の彼女の活動を安倍元総理が高く評価して山口から立候補させた経緯も含め、岸田総理はそれらを承知の上で抜擢したはずで、政務官としての治績にも瑕疵はない。ならば総理はあくまで杉田氏を守らねばならないし、更迭するなら総理自身も任命責任をとって辞任するのが道理というもの。

こういう総理について行く自民党議員も危ういし、このままでは日本も危うくなる。何故なら「小は家族」から「大は国家」まで、主(あるじ)と構成員との信頼関係ほど重要なものはない。終戦間もない9月27日、GHQを訪れた昭和天皇の次の言葉にマッカーサーの心は激しく揺すぶられた。

敗戦に至った戦争の、いろいろの責任が追及されているが、責任はすべて私にある。文武百官は、私の任命するところだから、彼らに責任はない。私の一身は、どうなろうと構わない。私はあなたにお委せする。この上は、どうか国民が生活に困らぬよう、連合国の援助をお願いしたい。(藤田尚徳「侍従長の回顧録」)

国民に全幅の信頼を置く陛下、その陛下を心から信頼する国民であるからこそ、昨日まで熾烈な戦いをしていた300万将兵が命令一下武装を解除し、1億国民が戦後復興に向けて一丸となれたのだ。一国の宰相が「道理」、すなわち「物事の正しい筋道。また、人として行うべき正しい道」を弁えなければその国は危うい。

最後に岸田総理の判断を狂わせたと筆者が考えている、「教団」に関する世論調査について述べたい。

冒頭にリンクを張ったNHKの世論調査は昨年9月9日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた2392人の固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行い、1255人(53%)から回答を得たそうだ。

固定と携帯の割合は書いていないが、今どき固定電話に出るのは日がな一日ワイドショーに現を抜かす高齢者と思われる上、そもそも「教団」に関する以下のような質問の仕方がなっていない。これでは安倍国葬に反対するノイジーマイノリティーの跋扈とそれに影響される人々の増加も止むを得ない。

自民党は、今後、旧統一教会や関連団体と一切関係を持たないことを基本方針とし、党所属の国会議員との関係を点検して公表しましたが、自民党の対応は十分だと思うか尋ねたところ、「十分だ」が22%、「不十分だ」が65%でした。

設問は「自民党の対応は十分だと思うか」ではなく、「自民党の対応は適切だと思うか」であるべきではないか。「不十分だ」と思う者は「自民党」が「今後、旧統一教会や関連団体と一切関係を持たない」のみならず、それらを「潰すべきだ」というのだろうか。筆者なら、自民党の対応を「憲法に違反する不適切なこと」と回答する。

斯くて一事が万事、日本社会でも国民を分断する「魔女狩り」が進行する。米国でもトランプが「カンガルー裁判」と揶揄する「J6委員会報告」や彼の納税申告書公開が民主党主導で12月に駆け込みで行われた。この3日からは多数派となった共和党が全委員会を掌握する下院議会が開かれるからだ。が、日本の政権交代は起こりそうもない。政治家よ、真面目にやれ!