ショアの釣り、また沖釣りでも重要になる、夜釣りにおける外灯。漁港に建った常夜灯の周りに魚が集まるのは、よく知られた話である。とりわけ釣り人には、オレンジ色っぽいナトリウム灯ではなく、白っぽい光の昔ながらの水銀灯が好まれる。この理由をご存じだろうか?

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)

堤防にある常夜灯の代表格【水銀灯とナトリウム灯はどちらが釣れる?】

水銀灯とナトリウム灯の違い

水銀灯とナトリウム灯の色の違いや、それに伴う(?)集魚効果の違いは、ある程度の経験を積んだ夜釣りのアングラーなら知っていることだろう。ナトリウム灯の方が集魚効果が低く、水銀灯の方が高い(ただ、場所によってはそこまで変わらないかもしれない)。

水銀灯とナトリウム灯の違いは、光の波長と消費電力など、科学的には多くの要素があるが、外見的な違いから言ってしまえばほとんど一つである。色温度が高くて光の色が白っぽいのが水銀灯で、色温度が低くてオレンジ色っぽいのがナトリウム灯だ。

堤防にある常夜灯の代表格【水銀灯とナトリウム灯はどちらが釣れる?】ナトリウム灯は目に優しい暖色系(提供:TSURINEWSライター井上海生)

近年は釣り場の常夜灯にも、ナトリウム灯が増えてきている。おそらく新設される釣り場の常夜灯は、何か特別な理由がない限り、ほとんどがナトリウム灯だろう。その理由としては消費電力が低く、また「羽虫が集まりにくい」という大きな特長が上げられる。

釣り人目線では水銀灯が大勝利?

水銀灯とナトリウム灯。釣り人目線で見て、どちらが釣り場を照らしていてほしいかといえば、まず水銀灯だろう。沖の夜炊きでも、筆者の知る限り、暖色系のナトリウム灯は見たことがない。水銀灯の方が水中に光が届きやすいのだろう。

特に陸っぱりの釣りでなぜ水銀灯が好まれるかと言って、ナトリウム灯が虫を寄せにくいのに対して、水銀灯は虫を寄せやすいからである。白っぽい光の光暈には、羽虫が集まりやすい。

そもそも光の下になぜ魚が集まるのかといえば、その光を糧に植物性プランクトンが光合成するからだが、水銀灯の下では、それにプラスして「羽虫が落ちてきやすい」という要素が加わる。これは、アジ・メバルといった魚の捕食には大きなメリットがある。

メバルはともあれ、アジは多くのフィッシュイーターのベイトとなるので、タチウオやシーバスが集まりやすいのも水銀灯の光の下というわけだ。

堤防にある常夜灯の代表格【水銀灯とナトリウム灯はどちらが釣れる?】水銀灯の影にシーバスの気配(提供:TSURINEWSライター井上海生)

なぜ水銀灯が消えつつあるのか

上述したように「虫を寄せやすい」、また「消費電力が多い」ことから、漁港周りや、あるいは街道から水銀灯は消えつつある。ただ、光の強さとしては強く、照射力も高いことから、闇の深い山道などでは水銀灯、もしくは新設されたLED灯を見ることがある。

我々の身近なところで例を挙げると、トンネルの中の照明は、今はほとんどナトリウム灯に切り替わっている。消費電力が低く、虫を寄せにくい。外灯としてこれに優れるものはない。水銀灯のメリットは、あくまで釣り人目線でしか感じられない、ともいえる。