2022年の天候傾向から学ぶ、流通業界に向けた知見

 ここからは2022年の天候傾向から得られた知見について解説していきたいと思います。

 まず最初に注目したいには、「日本海側だけでなく太平洋側でも、ちょっとしたドカ雪のリスクが高まっている」という点です。

 雪の多い日本海側の地方に限らず、東京など太平洋側の地方であっても、低気圧の発達や上空の寒気の規模によってはわずか数時間のうちに一気に数cmの雪が積もることがあるということです。雪に慣れていない地方では、数cm程度の積雪でも交通機関がマヒ状態に陥ることがあります。

 そもそも関東地方などでは、雨になるか雪になるかの判断が難しいケースが多く、それに基づく購買行動の予測はさらに困難を極めます。降雪が予想される場合は、精肉類や簡便惣菜、菓子パン類など、2~3日程度外出がままならない状態となる可能性が予想される際に需要の大きく伸びる商品の発注量・在庫量をこまめにチェックし、廃棄ロス、機会ロスに注意しましょう。

 「雪に慣れた北海道でも、物流がマヒするほどのドカ雪に見舞われることがある」という点も注意が必要です。

 天気図や、天気マークで表現される天気予報の絵だけでは、必ずしも上空寒気の強さまでは分からないことがあります。テレビ等の解説で上空寒気の解説を聞き、上空5000m付近に、寒気が-36℃以下の寒気が入る場合はドカ雪に対して警戒、-42℃以下の寒気が入る場合は厳重警戒すべきです。公共交通機関のマヒ、道路での車の大規模な立ち往生など、万が一の場合を想定した物流計画や従業員配置の危機管理体制の発動を準備しておきましょう。

太平洋側でもドカ雪のリスクが高まる理由!2022年の天候トピックス総まとめ
(画像=S_Kazeo/iStock、『DCSオンライン』より 引用)

 同じく冬のトピックとしては、「寒冬でも、3月の気温が高ければサクラの開花は比較的早い」があります。

 一般に春先のサクラの開花時期は、「冬の間の気温が低めなら遅く、高めなら早くなりがち」と言われています。それは冬季から春先にかけての気温の積算値(積算気温)が発芽や開花に影響するからです。2021年12月~2022年2月のかけての冬季は、結果的に気温が平年より低く、”寒冬”傾向だった地域が多かったという結果でした。

 しかし2月末以降の急激な気候の変化でその後は顕著な高温が続いたため、結果的には各地でサクラの開花が平年より早くなりました。早い機関では、1月中から桜の開花時期を予想する情報を発表しています。サクラの開花予想を行う機関が定期的に発表する開花予想を、都度チェックすることは重要です。ただ、地球温暖化の影響もあり、よほど3月の気温が低めと予想されている場合でない限り、これからの時代は冬季の気候に限らず、3月下旬の早い段階からサクラは咲き始めるのが基準と考えてMD計画を立てるほうが良さそうです。

 「気象庁でも梅雨明けのタイミングが読みにくいような季節推移になっている」ことにも注意したいところです。

 本来、梅雨明け直後は「梅雨明け十日」と呼ばれる安定した晴天が続く天候になるのが通常でした。しかしここ数年は、梅雨明けを思わせる夏空が続いたかと思ったら、その後ぐずついた天気が戻って結果的にまだ梅雨明けとなっていなかったり、雲多めの天気が続いていたものの、いつの間にか梅雨前線が消滅して梅雨明けとなったりと、梅雨明け発表に関して「気象庁泣かせ」のケースが多くなっています

 地球温暖化によってさらに天候予測が難しくなることを鑑みても、梅雨明けのタイミング(梅雨明けが発表されているかいないか)に拘らず、気温傾向や体感的な陽気を参考に夏物、盛夏物の展開の強弱を判断するほうが、お客様の購買ニーズを考えた場合、現実的と考えられます。

2023年も猛暑の予感? 夏のウェザーMDの注意点

 夏は「40℃超えの気温が、それほど珍しくなくなっている」という点を憶えておきましょう。

 気象庁HPに掲載されている国内での最高気温順位表を見ると、2007年以降の日付が多くランクインしています。つまり、つい15年ほど前まではまれな現象だった40℃超えの気温が、今やそれほど珍しくなくなってきています。

 40℃超えの気温が予想される日は、スポーツドリンクの展開強化は必須ですが、それ以上に生死に関わる暑さにもなるので、お客さま・従業員の健康管理を優先的に考えるべきです。屋外での長時間作業は回避し、こまめに休憩を取らせ、水分摂取を促し、熱中症予防に心がけましょう。

 また、「線状降水帯の予測は難しい」という点も憶えておきたいところです。

 2022年6月から、気象庁は線状降水帯に関する予測情報の運用を開始しました。2022年11月11日に気象庁が公表した初年度出水期(6~10月頃)の予報の適中率に関する検証資料によると、適中率は約23%となっています。当初気象庁が想定していた精度の水準と合致していますが、まだ技術的には進歩の途上にあると言えるでしょう。

 とはいえ、線状降水帯の発生が予想されるとの気象庁からの呼びかけがあった場合は、「空振り(予想したが実際には現象が起こらなかった場合と示す表現)」を恐れず、防災的見地を最優先にお客さまや従業員の安全を確保する施策を実施しましょう。呼びかけはおおむね半日後の現象発生を想定して行われます。

太平洋側でもドカ雪のリスクが高まる理由!2022年の天候トピックス総まとめ
(画像=peeterv/iStock、『DCSオンライン』より 引用)