代表監督に求められるスキルとは?

ですが、代表監督に求められるスキルは勝敗に直結するゲームマネジメントだけではありません。チームの意識や雰囲気を整えるチームマネジメント、サッカー協会や協賛企業、関連団体との円滑なコミュニケーションを維持するメンテナンススキルなど、「(ゲーム以外の)その他の部分」の能力も求められます。

最後の外国人監督になったハリルホジッチ監督は実績豊かでとてもゲームマネジメントに長けた監督でした。ただ、「その他の部分」はあまりいい声が聞こえてきませんでした。

一方で「その他の部分」が整わなければ監督も選手もゲームに集中できるはずがありません。森保監督は、これまでの4年余りを通して「その他の部分」で保証書のようなものがあると考えられます。次のW杯は約3年半ごと比較的準備期間が短いこともあり、ゲームに集中できるという意味で、まずは良い選択だったように思われます。

8年の長期政権の意味

次のW杯まで無事に指揮を執れば日本代表監督としては異例の8年という長期政権となります。まず、この長期政権のメリットについて考えてみましょう。

実は8年というと日本代表監督としては長いのですが、W杯常連国の中では決してそうではありません。たとえば、2021年に15年務めて退いたドイツ代表のレーブ監督、2010年にスペイン代表をW杯優勝に導いたデル・ボスケ監督の8年など、必ずしも「異例の長期政権!!」と驚かれるようなものではありません。

逆に日本代表の場合はこれまでが短かったと言うべきでしょう。W杯の各大会を目標とした4年政権が基本だったように見えます。その間、良くも悪くも「新陳代謝」が繰り返されてきました。

例えば2002年W杯日韓大会を率いたトルシエ監督が徹底した規律を導入した一方で、次のジーコ監督は選手を信頼する自主性を重視する方針でした。つまり、前向きな新陳代謝ではなく、日本代表サッカーの「試行錯誤」を繰り返していたようなものです。当然のことながら、一貫した「日本らしいサッカー」の追求ができていませんでした。

もちろん、森保監督の目指すサッカーが「日本人に最適なサッカー」かは未知数ですが、2022年カタール大会で披露したサッカーの発展形が生まれることは期待できそうです。まずは日本サッカー協会の決断を「ブラボー!」と考えて応援したいですね。

森保監督以外は引き出せなかった日本人の驚異の身体能力とは?

では、ゲームマネジメント、特にサッカーのあり方(サッカーフィロソフィー)についてはどうでしょうか。ドイツ代表、スペイン代表を破った闘い方、この闘い方を貫くべきなのでしょうか?

ここからは私の所感になりますが、この2戦の闘い方ではなく、この2戦で確信を持てた日本人の「驚異の身体能力」を活かしたサッカーを展開してほしいと思います。日本人の驚異の身体能力…などというと「何を馬鹿な?」と思われるでしょうか。

もちろん、日本ではフランス代表FWエムバペのようなウサイン・ボルトなみの走力と技術を兼ね備えた選手はなかなか出てこないでしょう。ドイツ代表のようにプロレスラー並みにパワフルな大男を揃えることも難しいでしょう。